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荒くれサポーターのプライド。
フランクフルト、想定外の好発進!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2009/10/10 08:00
やや狼藉が目立つが、フランクフルトのサポーターはチームを愛してやまない
『時計じかけのオレンジ』の主人公気取りの悪ノリも。
こんなこともあった。昨シーズンの2月21日、フランクフルトから電車で1時間ほどのところにあるカールスルーエとのローカルダービーが行なわれた。
サポーターが身につけるのは、チームカラーの赤や黒ではない。オレンジだ。オレンジ色のスウェットや、どこで手に入れたのか、夜間の工事現場で働く人が着ているオレンジの蛍光色のラインが入った作業服で身をかためている。ハーフタイムには発炎筒をたき、ピッチに向かってロケット花火を打ち込む。この騒ぎで、試合は後半開始が遅れた。
あの日の彼らの応援にはテーマがあった。スタンリー・キューブリック監督の映画『時計じかけのオレンジ』だ。映画では、主人公たちが数々の悪事や暴力を働いていく。そんな登場人物のように、フランクフルトのサポーターも荒らくれ者を演じていた。
この蛮行の責任をとらされ、クラブはリーグから罰金を課されてしまったが、アウェイサポーター用のスタンドをオレンジに染めた様子を映した写真はステッカーになってフランクフルトの街のそこかしこに貼ってある。そのステッカーにはこんなメッセージが添えられている。
「これこそが俺たちだ!!」
スキッペ監督は悪擦れしたサポーターを満足させられるか。
サポーターの希望通りに新たな監督の下でスタートを切ったチームは、どう変わったのだろうか。
まず、守備に粘り強さが加わった。ディフェンダーや中盤の選手が前線の選手を追い越してフィニッシュに関わるシーンも大きく増えた。選手たちの意識の変化が手に取るようにわかる。相手に合わせるサッカーから、自らアクションを起こすサッカーへの移行は、ポジティブな雰囲気を生み出している。
『ビルト』誌は「スキッペ監督の魅力的なサッカーにフランクフルトサポーターは夢中」と報じている。
スキッペ監督も胸を張る。
「どんな試合でも、魅力的なサッカーをサポーターに見せようと心がけているんだよ。常に上手くいくわけではないだろう。でも、我々はこの道を進んでいくつもりだ」
昨季は、耳をつんざくようなフランクフルトのサポーターのブーイングを何度も耳にした。今季は、地鳴りの拍手や歓声に出会えるのだろうか。それとも、風変わりな応援でも披露してくれるのだろうか。サポーターたちが調子に乗って、力いっぱい喜びを表現するところを見てみたい気もする。ちょっぴり面倒くさそうではあるけれど。