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荒くれサポーターのプライド。
フランクフルト、想定外の好発進!
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2009/10/10 08:00
やや狼藉が目立つが、フランクフルトのサポーターはチームを愛してやまない
サポーターがチームを変えたのかもしれない。昨季は残留争いに巻き込まれていたフランクフルトが、今季は好調な滑り出しを見せている。スキッペ新監督に率いられたチームの今季の公式戦の成績は4勝4分1敗(9月27日現在)。4連勝中のハンブルガーSV(HSV)に待ったをかけたのもフランクフルトだった。リーグ第6節HSV戦では、1-1の引き分けに終わったものの、試合後のサポーターは選手たちの健闘をたたえて拍手を送っていた。わずか1シーズンで、チームを取り巻く状況はずいぶん変わった。
荒くれサポーターに吊し上げられたフンケル前監督の悲哀。
昨シーズン終盤、フランクフルトのサポーターは怒りを抑えられなかった。試合が終わりに近づくと、ゴール裏のスタンドから次々と人が去っていく。帰路に就くのではない。彼らが向かうのは、本拠地コメルツバンク・アレーナの正面入り口だ。そこからVIPエリアのある上階にむかってこぶしをつきあげて、繰り返す。
「フンケル、やめろ! フンケル、やめろ!」
当時のフンケル監督への不満は限界に達していた。相手にあわせた受身のサッカーをつらぬく。勝った試合のあとでも、勝利に貢献した選手への説明もなくメンバーを代える。昨季までフランクフルトでプレーしていた稲本潤一も、いきなりメンバーを外されてしまうことがあった。勝っているチームはいじるな。そんな鉄則は彼には通じないようだ。これでは、選手がモチベーションや調子を維持するのは難しくなる。
『スポーツビルト』誌のインタビューでは、
「あなたのチームの成績はパッとしないし、サッカー自体の魅力にかける」
とインタビュアーに言われたこともある。退屈なサッカーをしている上に結果が伴わないのだから、救いようがなかった。契約期間を1年残したまま、フンケルはチームを去ることになった。
公共マナーなんかクソ食らえ! サポーターの無軌道ぶり。
フランクフルトのサポーターは、ヤンチャな学生のような雰囲気を持っている。アウェイでの試合のあとにフランクフルトへと帰るサポーターと同じ電車に乗り合わせると大変だ。新幹線で修学旅行の生徒たちと同じ車両に乗り合わせたときの比ではない。ビールのビン片手に、車両から車両へ。歌ったり、騒いだり。周囲のことなどお構いなしだ。個室のように扉で仕切られているコンパートメント内で彼らと乗り合わせるのは、最も避けたい事態だ。騒ぐだけならまだいい。
「ねぇ、タバコ吸ってもいいかな?」
車内はもちろん禁煙である。