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「表現力」あるサッカーでJ1昇格を!
ジェフ千葉・ドワイト監督の意識改革。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2011/07/02 08:00
選手としてU-21サッカーオランダ代表にも選出されたこともあるジェフ千葉のドワイト監督。PSVアイントフォーヘン、NECナイメヘンなどの監督を経て、今季からジェフ千葉に
最もシンプルに表現するなら、ジェフ千葉の好調の要因は、「FWオーロイの規格外の高さ」ということになるのだろう。身長204cmという高さはヨーロッパでも珍しく、千葉の攻撃の最大のオプションになっている。
ただし、それだけに目を奪われていたら、J2で躍進する千葉の強さの本質を見失ってしまうのではないだろうか。今季就任したドワイト監督のマネージメント能力にも、首位に立っている秘密が隠されている。
オランダ人のドワイト監督は、今年1月に千葉にやってくると、すぐに選手たちの意識改革に取り組んだ。
ドワイト監督は言う。
「日本人選手というのは、自分を表現するのがあまりうまくない。だから、私は選手たちに自分の意見をどんどん言うように求めた。まだチームの土台を作っている過程にすぎないが、その成果は少しずつ現れ始めたと思う。(6月19日の)横浜FC戦の前のミーティングでは、あるMFの選手が戦術的な意見をみんなの前で述べた。確実に選手たちは自分を表現するようになってきていると思う」
ドワイト監督が選手に教えた「表現力」の真価が現れはじめた。
自分を表現する――。確かにそれは、日本人選手が苦手にする行動のひとつだろう。ヨーロッパのように議論が習慣になっておらず、日本人どうしで意見をぶつけ合うとどうしても後味の悪さが残ることが多い。自分を表現しない方が、うまくいくことが多い社会と言ってもいいかもしれない。
だが、指示されたことをやっているだけでは、勝負強いチームを作ることはできない。厳しい展開になるほど、自分で考えて行動する、すなわち表現する力が求められるはずだ。ドワイト監督はシーズン前の合宿で選手と個人面談を行ない、まずは1対1で意見を求める作業から始め、少しずつ自己主張をする雰囲気を作り上げていった。
戦術的に言えば、今季の千葉はオーロイを目がけた「ロングボール」と、オランダ的にボールをつなぐ「ポゼッション」の両輪で攻撃を仕掛けているが、その使い分けが高いレベルでできているのも佐藤勇人らMF陣の「表現力」が発揮されているからだろう。