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ヴァージン、ロータス、USF1……。
F1初参戦の新チームを徹底分析。 

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西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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posted2009/12/24 10:30

ヴァージン、ロータス、USF1……。F1初参戦の新チームを徹底分析。<Number Web> photograph by Getty Images

ヴァージン・グループの創設者にして会長を務めるサー・リチャード・チャールズ・ニコラス・ブランソン(59歳)。宇宙旅行会社など新規事業参入で常に話題を振りまき、自身冒険家としての活躍も多い

アメリカ人ドライバーの育成が急がれるUSF1。

 USF1(22/23)はその名の通りアメリカのチーム。

 チーム代表はF1活動の後アメリカでIRLやNASCARに関与していたケン・アンダーソンで、USF1は彼と元F1ジャーナリストでアメリカのSPEED・TVのレポーターを務めていたピーター・ウインザーが共同設立したチームだ。

 ウインザーはスポーティング・ディレクターを務めるというが、かつてはウイリアムズで広報部門やN・マンセルのマネージメントを担当していた経験もある。

 チームの資金的バックボーンは複数の投資家から仰ぐもので、その一人にYouTubeの設立者チャド・ハーリーの名前が挙がっている。

 チームの本拠地はアメリカだが、スペインにも前線基地を置き、ここがレース拠点となりそうだ。ドライバーは本来であればアメリカ人を乗せたいところなのだが、F1ドライブに必要なスーパーライセンスを持つドライバーがいない。当面は経験あるヨーロッパ人ドライバーを使うことになるはずだが、そのいっぽうで若手アメリカ人ドライバーを育成することが急務とされている。本命中の本命は、元F1チャンピオン、マリオ・アンドレッティの孫マルコ・アンドレッティと噂されている。

ヴァージン・レーシングの弱点はドライバーの実力不足か?

 ヴァージン・レーシング(24/25)はイギリスF3のトップチーム、マノー・モータースポーツ(代表ジョン・ブース)がベースとなったもの。かつて中嶋一貴がこのチームのドライバーとしてF3で1勝したことがあるし、L・ハミルトンも同じく1勝を飾っている。

 とはいえこのマノーがいきなりF1にステップアップするという話ではなく、マノーがこのチームの実質的代表であるデザイナーのニック・ワースに“名義貸し”をしたというのが真相。ジョン・ブースはチーム代表ではあるが、大きな権力を持っているわけではなさそうだ。N・ワースはかつてシムテックというF1チームを運営した経験もあり、FIAとの関係も密な、なかなかやり手の人物でもある。

 ヴァージンは冒険家リチャード・ブランソン率いる企業体で、今年はブラウンGPにスポンサードしていたが同チームの株式買収の拒否に遭い、新しくこのチームを立ち上げることになった。

 資金的に不安がないことがこのチームの強味のひとつだが、ウィークポイントはドライバー。元トヨタのグロックとGP2ドライバーのL・ディグラッシではいささか心もとない。しかし、大物獲得は実績の上がった2~3年後と考えているのだろう。

 こうしてみると、新4チームの中ではロータスがトップ、ヴァージンがこれに続き、カンポスMETA1とUSF1は常に資金的困難を捌いていかなくてはならないというのが現状のようだ。

 様々な大企業と人物が入り乱れる来季の戦国F1。F1参入とはかくも難しい大事業であり、一大起業なのである。

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