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3年の時を経て“帝王”がF1に帰還!
シューマッハーの復帰は成功するか?
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/01/08 10:30
アロンソが「F1史上最もスポーツ精神に反するドライバー」と過去に言い放っているが、果たして今回の復帰では誰とどんな名勝負を見せてくれるのか?
あけましておめでとうございます。
今年最初にして早くもヤブニラミ気味の当コラム。昨年に引き続きよろしくお願いします。
新年早々、俎上に乗せるのはミハエル・シューマッハーの“ベンツ”GPからの復帰について。果たして3年間のブランクを背負った“帝王”は、今のグランプリシーンでも勝つことができるのか?
結論から言いますと、筆者は勝てると思っている。
理由はいくつかあるのだけれど、その最大のものはシューマッハーがいまだ肉体的な“旬”を保っていると思われるからだ。
コリーヌ夫人の願いで引退したが、未練を残していた。
思い出して欲しいのは引退した2006年のシューマッハー。
シーズン最終戦となるブラジルGPでシューマッハーは、ランキングでトップのアロンソを10点のビハインドで追う絶望的な状況でありながら、それでもチャンピオン争いを諦めず最後まで戦っていた。
そのレースは、7週目のリスタートの際に1コーナーでいきなりパンクに見舞われ、ほとんど最後尾まで落ちながらも、翌年には年間王者となった絶好調時のライコネンと激しい攻防戦まで繰りひろげるという凄まじい内容であった。残り3周の時点でライコネンに肉薄し強引にインをこじ開け4位でフィニッシュしたパフォーマンスだけを取り上げても、引退する理由などこれぽっちも見当たらなかったと思う。
シューマッハーの引退は妻コリーヌのたっての願いだったといわれ、裏返せばシューマッハー本人にとっては不本意な幕引き。F1ドライバー人生は完全燃焼したわけではなかったのだ。それが証拠に引退後はコケて首を傷めるほどバイクレースに熱中。またフェラーリのアドバイザーと称してことあるごとにサーキットに姿を見せ、ピットウォールからレースの成り行きを見ていたものだ。レースに未練タラタラなのは傍目にもよく分かった。
“勝てるチーム”メルセデスGPで満を持してのカムバック。
そのシューマッハーにカムバックのチャンスが訪れたのは昨年。かつてフェラーリでチームメイトだったマッサが負傷、欠場してからだ。
サードドライバーであるバドエルのパフォーマンスが箸にも棒にもかからないことからシューマッハーに白羽の矢が立ち、旧型車両を持ち出してテストまでする一幕もあったが、バイクレースで負った首の負傷が完治していないというドクターストップがかかって断念。しかしいま思うにこれは、お膳立てしてくれたフェラーリへのお義理試乗だったようで、シーズン途中での“不完全”復帰はさらさら考えていなかったようだ。それを証明したのは他でもない、今回の復活劇であろう。