チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
下馬評をくつがえせ。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byBongarts/Getty Images/AFLO
posted2009/04/07 07:01
今後のチャンピオンズリーグを「プレミアのトップ4対バルセロナ」と展望すると、頭に一番カチーンと来るのはどのチームだろうか。
それはポルト、ビジャレアル、バイエルンの3チームのなかのひとつという話になるが、過去の実績を踏まえると、やはりバイエルンになる。近年の成績こそイマイチだが、欧州を代表する名門。チャンピオンズリーグにおいても4度の優勝を記録した実績が光る。
その存在が無視されているわけだ。
動機をかき立てる可能性は大いにある。バイエルンと準々決勝で対戦するバルセロナは、そうした意味で警戒が必要だ。
バイエルン対バルセロナで想起するのは、かつてのバイエルン対レアル・マドリー戦だ。’99-’00シーズン、’00-’01シーズンでは準決勝、’01-’02シーズンでは準々決勝と、3シーズン連続で佳境を迎えた段階で対戦しているが、いずれも接戦。バイエルン対レアル・マドリーは、当時の看板カードだった。
守るバイエルン対攻めるレアル・マドリー。対戦の構図は決まっていた。少なくとも’01シーズンまで、バイエルンは3-4-1-2を布陣していた。レアル・マドリー戦にも、超守備的なサッカーで臨んだ。
その「守って守ってカウンター」のサッカーは、思いのほか効果を発揮した。’00-’01シーズンは、その作戦が鮮やかに決まり、レアル・マドリーに対して、まさかの勝利を飾っている。
当時のバイエルンには、独特の匂いがあった。その守備的サッカーは、欧州サッカー界のなかで、ある意味で燦然と輝いていた。だが、バイエルンは以降、世の中の流れに従うように、サッカーを攻撃的に変化させていく。成績もそれとともに、上がらなくなっていく。没個性の状態に陥ることになったのだ。皮肉な話だ。
バイエルンの名門復活がかかるバルサ戦
似たタイプ同士の対戦には、番狂わせの予感は抱きにくい。対バルセロナとの準決勝は、普通に戦えば、バイエルン苦戦が予想される。
「プレミアの4強+バルセロナ」の下馬評に、カチンと来ることができるか。ちなみに両者は、少なくともここ最近、対戦していない。’98-’99シーズンまで遡らなくてはならないはずだ。グループリーグで戦ったこのときは、バイエルンの1勝1分けに終わっている。
記憶に残るのは、カンプノウで行なわれた第2戦。3-3の引き分けに終わった試合だ。その結果、バルサはグループリーグ敗退の憂き目に遭ったが、印象的だったのは、スタンドを埋めたファンの反応だ。試合後、カンプノウは拍手の渦に包まれたのだ。
試合そのものはとても面白かった。グループリーグで敗退したことは悲しいけれど、面白い試合を見た喜びも、それと同じくらいある。そこに満足する様子が、試合後のスタンドには広がっていた。チャンピオンズリーグで味わったカルチャーショックのひとつかもしれない。