Column from EnglandBACK NUMBER

ルーニーを巡る「3強」の思惑と、変貌する勢力分布図。 

text by

原田公樹

原田公樹Koki Harada

PROFILE

photograph byGetty Images/AFLO

posted2004/09/02 00:00

ルーニーを巡る「3強」の思惑と、変貌する勢力分布図。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 今季のプレミアのパワーバランスを左右する、ひとりの選手の行方が注目されている。エバートンのFWで数々の最年少記録を塗り替えてきた、18歳のウェイン・ルーニーである。ずんぐりした体型ながら、イングランド代表としてこの夏の欧州選手権では2戦連続2得点を決め、オールスター・スクワッド(優秀選手)にも選出され、いまやベッカムとオーウェンが消えたプレミア界の最大のスターだ。そのスーパースターを巡って、強豪クラブが獲得合戦を繰り広げている。

 もともと今季ルーニーはエバートンに残留するだろう、と見られていた。エバートンのモイス監督は「放出しない」と主張し続けてきたし、7月上旬には5年間で年俸約5億円という、これまでの2倍以上にあたる魅力的なオファーを出したからだ。

 これによって、興味を示していたチェルシーやマンUは獲得を断念したと見られた。対照的に粘ったのはニューカッスルだ。昨季は5位に終わり欧州チャンピオンズリーグへの出場権を逃してしまった71歳のロブソン監督は、今季優勝争いに絡むにはルーニーの得点力が不可欠だと考えていたのだろう。ニューカッスルはシアラー、ベラミーら現有の2トップに加え、今オフには18歳のミルナーやオランダ代表のFWクライファート、さらにマンUからニッキー・バットを獲得したが、開幕から2分け2敗と勝ち星がなかった。(編集部注:ロブソン監督は30日付で解任)

 ところが、ニューカッスルが移籍金40億円のオファーをあっさり断られると、一度は諦めたはずのマンUのファーガソン監督が動いた。「我々の意向は明確だ。あの少年が欲しい」と明言し、移籍金45億円以上を用意して再び獲得に乗り出してきたのだ。

 昨季3位に終わったマンUはストライカー不足で苦しんでいる。エースのファンニステルローイは開幕前にヘルニアで手術を受けて復帰は9月下旬。スールシャールはヒザを負傷して今季絶望で、サアも同じヒザを負傷したため復帰は9月中旬だという。この結果、起用できるFWは今季リーズから獲得した23歳のスミスだけになってしまった。開幕戦ではゴールが奪えずにチェルシーに敗れ、ここまで4戦して1勝1敗2分け。DF、MFにも陰りが見えるマンUが王者の座を奪い返せるかどうかは、ルーニーを獲得できるか否かににかかっている。

 ルーニー獲得合戦から早々に退却したチェルシーは開幕4連勝と好調だが、試合内容は決してよくはない。昨季2億800万ポンド(約416億円)という巨費を投じて選手補強をした金満クラブは、今オフも8950万ポンド(約180億円)をかけて7選手を獲得した。顔ぶれは、パウロ・フェレイラ、ロッベン、ケズマン、ドラグバ等、若くて将来を嘱望された選手ばかりである。

 その結果、各ポジションにレギュラー格が2人以上はいるというバランスのいい布陣になったが、まだ戦えるチームになっていない。この3戦からは、昨季ポルトを率いて欧州王者になったモウリーニョ監督がどんなサッカーをしたいのか見えて来ないのだ。監督自身が「10月か11月になれば、もっとチェルシーは強くなる」と話しているように、個々の選手の能力が最大限に引き出された戦闘集団になるには少し時間がかかるだろう。

 ライバルが苦しむなか、極端に強いのが昨季優勝したアーセナルである。開幕から4連勝して、昨季から続く連続無敗記録も44に伸ばした。先発の11人は昨季とほとんど変わりないが、サブのメンバーも一新している。昨年9月にバルセロナから獲得した17歳のスペイン人ストライカーのファブリガス、フェイエノールトから獲得したMFファンペルシ、身長190センチのDFセンデロス、昨季リーズで修行を積んだMFペナントと、タレント揃いだ。96年にベンゲル監督が名古屋グランパスエイトを辞めてアーセナルの指揮官に就任して以来、最も強いチームが出来上がったといってもいい。チャンピオンズリーグの1次リーグでも比較的楽なグループに入り、過密日程の負担も少なくなったため、念願のプレミアと欧州王者の2冠を獲る可能性はこの数年間で最も高い。 

 最後の興味は、オーウェンが抜けた新体制のリバプールとフランス前代表監督のサンティニ氏が率いるトットナムだろう。これらのダークホースが、どこまで上位チームとの対戦から勝ち星を奪うかによっても、パワーバランスは大きく変わってくるに違いない。

海外サッカーの前後のコラム

ページトップ