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南ア戦で負けない戦術を見つけた!
“アンカー稲本”という日本の“蓋”。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byDaiju Kitamura/AFLO SPORT

posted2009/11/16 14:25

南ア戦で負けない戦術を見つけた!“アンカー稲本”という日本の“蓋”。<Number Web> photograph by Daiju Kitamura/AFLO SPORT

 岡田ジャパンはW杯本大会の会場、ネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアムでホスト国・南アフリカとスコアレスドローで引き分けた。

 民族楽器「ブブゼラ」が鳴り響くアウェーの異様な雰囲気のなか、無失点で切り抜けたことを称えるべきか、それともここ最近の親善試合で9試合中1勝しかしていない南アフリカ相手に得点できなかったことを問題視すべきか。どちらかと言うのであれば、無失点に封じた意義を強く感じた試合だった。

 岡田武史監督はスペインから試合前日の合流となった中村俊輔の疲労具合を考慮して先発から外し、“奇策”に打って出た。前線を3トップ気味にして構成を変更。中盤は稲本潤一をアンカーに置き、長谷部誠、遠藤保仁をその前に配置するというトリプルボランチをぶっつけ本番で採用したのだ。

絶対に勝ちたいホスト国・南アの攻撃を見事に阻んだ稲本。

 4-3-2-1システムの肝は3トップ気味にした攻撃面よりも、稲本が加わった守備の厚みにあったと言っていい。来年3月まで招集できない欧州組のテストを今回の遠征で優先して行なう意向を示していた指揮官の大きな狙いのひとつが、この「アンカー稲本」だった。

 稲本はセンターバックの前に陣取り、球際の強さを発揮して次々と攻撃の芽を摘んだ。

 前半10分にはゴール中央に切り込んできた相手を食い止めてボールを奪い、そこから長谷部のミドルシュートにつなげている。味方が1対1の守備で対応する場面では加勢に向かい、挟み込んでボールを奪うシーンも多かった。身体能力で勝る南アフリカに対してスライディングタックルでピンチを防ぐなど、ペナルティーエリアへの侵入を未然に防ぐ働きを果たした。

 チーム全体の守備としては間延びしたところを利用されてカウンターを受ける場面があったにせよ、馬力のある稲本を置いた効果はあったのではないだろうか。

フランスリーグが稲本の“走り”をバージョンアップさせた。

 最近の稲本には走りの量とともに、質の向上を感じる。この試合ではバランスを取ることに気を配りながらも、“汗かき役”の側面を出していた。

 それもこれもフランスリーグで揉まれている成果であろう。スペインやプレミアに比べると地味な印象だが、フランスリーグのレベルの高さを指摘する関係者は多い。実際、今季の欧州CLでもボルドーやリヨンがグループリーグで首位に立っており、決して侮れないレベルにあることを証明している。

 フランスリーグ事情に詳しい、ある代理人からこんな話を聞いたことがある。

「フランスリーグではフィジカルという言葉が、走力を指すものとして解釈されている。走力がなければフランスリーグでは通用しないと言われています」

 今季レンヌに移籍した稲本はレギュラー獲りに苦しんではいるが、日々の練習の成果が走力のレベルアップとなって表れているのだと言える。

【次ページ】 サイド攻撃不能で、攻めは課題ばかり残った南ア戦。

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