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長谷部が誇る“世界基準の判断力”。
香港戦初ゴールの25歳は急成長中!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2009/11/19 14:30
岡田ジャパンの年内最終戦となったアウェーの香港戦は、ホイッスルが吹かれる前から、なにやら苦戦しそうな雰囲気があった。世界の強豪国にどう立ち向かっていくのかが、現在進行形のテーマ。W杯本大会を想定した南アフリカとの戦いを終えた直後にアジア勢との試合となれば、チームのモチベーションに落差が生じてしまってもおかしくない。
その嫌な予感どおり、前半立ち上がりのジャパンブルーの動きは鈍かった。出足鋭い守備を披露した香港とは好対照だったため、体の重さが余計に目立った。引いた相手に苦しみ、様子窺いの横パスを重ねるうちに、いたずらに時間が過ぎていった。
閉塞した状況を打ち破ったのが長谷部誠だった。前半33分、内田篤人の縦パスをトラップして前を向き、相手ディフェンスのチェックがないとみるや23mの距離からミドルシュートを突き刺した。即断即決の華麗なる一撃であった。
チームの動きが停滞した時……長谷部が流れを変える!
これまでの岡田ジャパンには、チームの思考がストップし、全体でプレーの判断が遅くなる時間帯が度々見受けられた。余計なドリブル、余計なパスでシュートチャンスをつぶしてしまうのだ。アジア相手なら「惜しかった」で済むが、世界の強豪が相手なら、数少ない好機を逃がしてしまうと命取りになってしまう。そんな危機感にも似た意識が、長谷部のプレーから漂っていた。常に世界の強豪との試合を意識して戦っているからこそ、高い集中力を持ってゴールを奪えることができたと言える。
もちろん、これが9月に対戦したオランダのディフェンスなら長谷部に体を寄せてきたはずである。執拗な守備を見せた先の南アフリカ相手でも、シュートチャンスにならなかったかもしれない。強豪相手だったら、一体どうだったか。おそらく長谷部の中には世界基準の尺度があるに違いない。国際Aマッチ27試合目にしての初ゴールにも喜んだ表情を見せなかったことが実に印象的だった。
「もっと頭を柔らかくする必要があると思う」
今や岡田ジャパンの中心選手となった長谷部は確実に変貌を遂げている。
チームトップクラスの絶対的な運動量もさることながら、アクセントをつけられるボランチになってきた。味方に使われることで力を発揮してきた長谷部ではあるが、プレーの幅を広げて味方を使う立場にもなってきた。
これまで長谷部は、チームの攻撃が一辺倒になってしまうことに繰り返し懸念を表してきた。アーリークロスならアーリークロス、裏を狙うなら裏ばかりと、攻め方が単調になるのがこのチームの悪癖だ。10月のトーゴ戦後でもこのようなことを言っていた。
「これをやろうということになると、そればっかりになってしまうこともあるので、もっと頭を柔らかくする必要があると思う。もっと変化をつけていきたい」