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君はスペインを見たか。 〜世界選手権レポート 

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小尾慶一

小尾慶一Keiichi Obi

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photograph byAFLO

posted2006/08/24 00:00

 8月19日にスタートした、バスケットの世界選手権。強く、美しく、未来のあるチームを見たい人は、スペイン代表チームに注目してほしい。

 予選リーグ第5戦を終えた時点で、スペインは5勝0敗。もちろん、グループB(広島会場)のトップである。ニュージーランド戦は86−70、パナマ戦では101−57という大差で勝利。3連勝中のアンゴラも、10点差で下した。ダーク・ノヴィツキーのいるドイツ戦でさえ、92−71で圧勝。

 「本当に強いチームだ」とノヴィツキーは勝者を褒め称えた「速くて、強くて、シュートもディフェンスも素晴らしい」

 スペインの注目選手の名前を挙げてみよう。グリズリーズのスターPF、パウ・ガソール(26歳)。ラプターズのPG、ホセ・カルデロン(24歳)。今年ブレイザーズにドラフトされたPGセルヒオ・ロドリゲス(19歳)。ラプターズとFA契約を結んだフォワード、ホルヘ・ガルバホサ(28歳)。02年にウィザーズにドラフトされたコンボガード、カルロス・ナバーロ(26歳)。来年の1巡目指名が予想されるSG、ルディ・フェルナンデス(21歳)。

 主力のほとんどがNBA選手・NBA候補であり、個々の能力は間違いなく大会最高レベルである。また、ジュニア世代から共にプレーしているため、チームワークも万全だ。オフェンスでは多彩なバスケットカットから、流れるようなパス回しを披露。守備ではゾーンとマンツーマンを駆使した変幻自在のディフェンスで、対戦相手を翻弄する。

 この国のバスケット史上、最高の代表チームなのかもしれない。これまで、スペインは世界選手権でメダルを獲得したことがなかった。世界有数のプロリーグを抱えながら、1982年のコロンビア大会4位が最高だ。五輪においても、1984年に2位となった以外、これといった成績を残していない。

 「強いチームであるのは確かだと思う」とカルデロンは言う。「チームには、NBAで通用する選手が多い。セルヒオ(・ロドリゲス)は、向こうでプレーする準備ができている。ルディ(・フェルナンデス)も、来年はNBAへと飛躍できるだろう。ガルバホサも、来季はラプターズでプレーすることになっている。でも、今は、ただのグッドチームだ。その話が本当かどうかわかるのは、闘いが終わった後さ」

 スペイン人メディアのファルコルケン・モニュラも、カルデロンの意見に賛成だ。「確かに、史上最高に近いチームかもしれないが、まだそれを決めることはできない。現在のバスケットボールは、国際的なビッグスポーツで、世界全体のレベルも上がっている。その中で優勝することができれば、史上最高のチームと言えるだろう」

 スペイン版“ドリームチーム”は、自国のバスケット史を塗り替えることができるだろうか?華やかなプレーで、さいたまを彩ってほしい。

スペインからNBAへ。 セルヒオ・ロドリゲスインタビュー

──きみは、「スペインの魔術師」と呼ばれているね。マイアミ・ヒートのジェイソン・ウィリアムズに例えられることも多い。それについてはどう思う?

 「確かに、ジェイソン・ウィリアムズは好きだよ。パスやドリブルは大好きだし、彼のような「魔術師」的な派手なプレーをしてみたい。でも、自分では、ジェイソンよりも、スティーブ・ナッシュに近いと思っているけど」

──確かにプレーが落ち着いていて、頭脳的だよね。

 「そんなことないよ。頭脳的なんて、褒めすぎ(笑)。まあ、でも、ジェイソンのプレーは、とにかくスピードがある。ぼくもスピーディなプレーは好きだけど、ハーフコートオフェンスでの、テンポの遅いプレーも好きなんだ。ゲームメイクできるPGになりたいし」

──代表チームということで、スローなゲームを心がけている?

 「ノー。確かに、スペインチームとして世界選手権にやってきたのだから、試合に出ている間はぼくがチームの指揮をとらなきゃならない。チームを掌握するために、ちょっとプレーを変えることはある。でも、このチームはスピードのあるプレーが多いし、それはぼくのスタイルそのものだ」

──NBAでは、ジェイソン・ウィリアムズ以外に好きな選手はいる?

 「やっぱり、スティーブ・ナッシュ。あと、スピーディなPGは皆好きだよ」

──NBAでの将来について、聞かせてくれる?

 「来年は、ポートランド・トレイルブレイザーズでプレーする。6月のドラフトで、1巡目で指名してもらえたんだ。今は、ただ、プレーしたい」

──NBAでプレーする上で、君の売りは?

 「うーん、長所ねえ。NBA選手のほとんどは、ぼくなんかよりはるかにうまいから。NBA選手はすごくスピーディだし、クィックモーションでシュートをどんどん決めてくる。フィジカル面でも、まだまだかな。1年か2年ハードにトレーニングを積めば、ついていけると思うけど。NBA入りは、僕の夢だったんだ。ずっと、あのリーグでプレーしたかった。その夢がかなったわけだから、わくわくしているよ」

(セルヒオ・ロドリゲス──86年生まれ。190cm。素晴らしいボールハンドリング能力とパスセンスを誇るPG。昨季まで、スペインのトップリーグでプレー。今年、NBAのトレイルブレイザーズに1巡目27位でドラフトされた)

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