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2007年ドイツサッカー大賞を発表します。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byGetty Images/AFLO
posted2007/12/25 00:00
本場ドイツではクリスマス時期になると「日本でやってるドイツサッカー大賞だけど、今年は誰が受賞するんだ?」ということで国中が大騒ぎになる。先日は国家秘密情報省から「大統領に報告するので事前にリークしてほしい」の依頼があった。偉いこっちゃ。そしていま、我が家の玄関前にはドイツからの特派員が1万人も押しかけてきている。みんな、結果発表を待ち望んでいるのだ。いやはや大変な騒ぎになったものだ(本当かよ…)。
そんな夢を見た本日、ついに'07年ドイツサッカー大賞が決まった。では発表します。
受賞者はフランク・リベリーです。授賞理由=ブンデスリーガ史上最高額の移籍金でバイエルンに入団、期待以上の活躍を見せてチーム躍進に最大限の貢献をした。地元ミュンヘンのマスコミは6段階(最高が1、最低が6)に分けて選手を評価するのが恒例だが、どんなに優秀でも通常は2がせいぜいだ。だがリベリーだけには異例の「1」を与えた。新聞、雑誌を読むと、リベリーがベスト11に選ばれるのは、ほぼ毎試合に近い確率となっている。
著者の独断と偏見に基づいて選ぶドイツサッカー大賞にはこの他、ユニークな各賞を設けているので、「ついでに」紹介しておく。(不)名誉だけを与え、金品等は予算の都合上、一切ないので、贈呈側はいくらでも賞を乱発できるのが強み。これが世界各国の権威ある賞と異なる点である(これでも自画自賛です♪)。
おまけのその1『移籍するしかないで賞』。受賞者はファン・ブイテン、ファンデル・ファールト、ディエゴの3人。ファン・ブイテンはリベリーの通訳としては優秀だが、なにぶん大きな身体を持て余すだけで、チームの構想から外れてしまった。ブラジルから18歳のDFブレーノの入団が決まったことでますます居場所がなくなるのは明らか。ファンデル・ファールトとディエゴは、このままチームに残留しても得るものはないから、本人のためにも早くユベントスやレアル・マドリードへ移籍して大きく成長したほうが得策だ。
おまけのその2『大恥かいたで賞』は、候補者が乱立して選ぶのが大変だったが、ブンデスリーガのプライドに大恥をかかせたということでVfBシュツットガルトに決まりだ。昨季マイスターながら、チャンピオンズリーグで1勝5敗の体たらく。バルセロナはあまりに弱い相手にカンプノウがガラガラの状況、試合の後半戦はレギュラーを引っ込めて経験を積ませるために若手を投入したほど舐めきっていた。あんなプレー内容ではVfBがバルサ相手に勝利する確率は多く見積もっても1%、つまり100試合に1回しか可能性はないだろう。奇跡が起これば、だけどね。あ〜〜ぁ(溜息)。
おまけのその3『褒めてあげま賞』の受賞者は、ドイツ代表チームとクラスニッチにする。代表は今年12試合を戦って8勝2敗2分の成績。敵地でイングランドを破り、ユーロ出場を決めるなど肝心な試合はすべて手堅く勝利を収めた。だが結果よりも私は別のところに視点を置き表彰したいと思う。カストロ、ボアテン兄弟、エジル、アザモア、デジャガなど、両親が外国人という“新しい血”をたくさん入れたことだ。これに両親のどちらかがドイツ人というケースを加えると、フル代表とU−21には計18名もの選手数となる。人種差別撤廃運動に深くコミットしているサッカー界だけにこうした有言実行は社会のお手本だ。
クラスニッチについては前回のコラムで紹介したように父親の腎臓を移植して8カ月ぶりに復帰できたことを祝いたい。出場時間は14節64分、15節9分、16節ゼロ。そして迎えた前半の最終17節はフル出場、なんと2点を奪い勝利の立役者となったのである(拍手!)。0−1からの同点弾とトドメの5点目を決めるとは、まさに千両役者。専門誌「キッカー」がつけたポイントは最高の「1」だった。
さてこれにて表彰式を終りにする。と、ここで舞台に向かって赤い集団が押しかけてきました。バイエルンです。「俺たちにも何か賞をよこせ」と主張しているようです。しかし主催者はこれを却下しました。UEFAカップなんていう田舎の大会に出ているわけだし、スタートダッシュは良かったけど息切れしてしまい、辛うじて得失点差でリーグ1位にいるわけなんだから受賞の対象にはなりません! 2連敗でもしたら監督のクビが速攻で飛ぶチームだけに、後期はもう少し頑張るように。