Column from SpainBACK NUMBER
クラシコの苛立ち。
text by
鈴井智彦Tomohiko Suzui
photograph byTomohiko Suzui
posted2007/12/27 00:00
「ホワイト・クリスマスなんかにはさせないよ」
またうまいことをいう。
クリスマスとレアル・マドリーの白をかけてクラシコの勝利を願っていたのは、バルセロナの人たちだった。
しかし、いつものように強気な声は響いて来ない。カンプ・ノウでのクラシコは圧倒的な勝率を誇っているのだが、どうも不安の影がチラチラする。
そりゃ、そうだ。前節、ロナルド・クーマン率いるバレンシアに圧勝したけど、メッシが壊れてはテンションもあがらん。
ボージャンにドス・サントスがいるじゃないか。
バルセロニスタは十代の若者に期待を寄せた。でも、ちょっとおかしい。誰も「オレらにはロナウジーニョがいるから」という声をあげないのだ。
このところの絶不調に加えて、練習での覇気のなさも指摘されていたロナウジーニョ。でも、なんだかんだいって「ロニーは期待に応えてくれるだろう」という思いを、誰もが心の片隅に大切にしまってもいた。最高のクリスマス・プレゼントとして。
しかし……プレゼントは届かなかった。嗚呼、ブルーなクリスマス。バルサは呆気なく0−1で敗れたのである。
地元スポーツ紙のアンケート調査。
「正当な敗戦である?」
イエス81%。ノー19%。
「敗戦の罪は誰にある?」
全員51%。ライカールト31%。ロナウジーニョ18%。
「レアル・マドリーとの7ポイント差は取り戻せる?」
イエス31%。ノー69%。
かなり弱気。かなりの負け犬。カタルーニャ人らしさなし。
あの日カンプ・ノウには、こりゃ勝てないわ的な空気が漂っていた。
最初はまだよかった。35分にバプティスタに先制弾を決められても、まだ生気がみなぎっていた。なんせ魔物が棲むといわれるカンプ・ノウだ。逆転可能。10万人の罵声はレアル・マドリーを非力にさせるのがクラシコだ。でも、次第に苛立ちが募っていく。
選手に魂が感じられない。
こんなときはキャプテンのプジョルがイレブンを叱咤するのだが、ロビーニョの相手をするだけで余裕がない。エトーの古巣レアル・マドリーに向けた個人的な思いも伝わってこない。ないないづくし。
ジレンマに襲われる。
ロナウジーニョにブーイングをしたいが、まさかクラシコでするわけにもいかんだろう。そんな葛藤もカンプ・ノウから殺気だった雰囲気を奪っていく。いつもなら負けてるときのバックパスには、間髪入れずにツッコミが入るのだが。
今後もバルサは問題が山積みだ。
エトーとヤヤ・トゥーレが、ガーナで行われるアフリカ選手権2008に出場する。新年早々から約1カ月間、バルセロナを離れてしまう。メッシのケガも早くて全治1カ月である。
そして、何より最大の問題は、ロナウジーニョだ。バルセロニスタはクールだ。エトーやメッシは時がたてば戻ってくるが、あの頃のロニーはもう戻って来ないだろうと思っている。
サヨナラ。いまはそんな気分だ。