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三都主と宮本が開ける扉。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2007/02/08 00:00

三都主と宮本が開ける扉。<Number Web> photograph by AFLO

 レッドブル・ザルツブルクはオーストリアのクラブだが、そのスポーツディレクターを勤めるオリバー・クロイツァーはドイツ人だ。昨年11月、Jリーグに視察に行くことが決まると、彼は日本にいるドイツ人のツテを頼った。

 クロイツァーは来日すると、当時浦和レッズの監督をしていたブッフバルトを訪ねた。彼が「お勧めの選手はいないか?」と訊ねると、ブッフバルトはこう答えたという。

 「三都主と闘莉王がいいだろう」

 レッドブル・ザルツブルクが日本人に興味を持ったのは、昨年秋のことだった。栄養ドリンク『レッドブル』の販売が日本で苦戦しており、それを打開するためにサッカーの手を借りようと考えたからである。

 ザルツブルクはアディタスと契約しており、そのルートからも選手の情報を得ることができた。当時、現地の新聞には、加地亮、茂庭照幸の名前もあがったが、総合的に情報を分析した結果、ザルツブルクは三都主と宮本恒靖を獲得することになった。

 こういう経緯を知っているだけに、現地の記者たちが2人に対して懐疑的だったのは仕方がないだろう。宮本の入団会見のとき、『ブラボ』誌の記者は「宮本はどこのポジションですか?」と質問をして、「そんなことも知らないのか!」とマテウス監督を怒らせた。会見場で広報が「チーム名を表記するときには、必ず『レッドブル』の名前も入れてください」とお願いしたことも、やっぱり宣伝のためじゃないかという雰囲気を増幅させることになった。

 しかし──。時が経つにつれて、こういうネガティブな印象は薄れつつある。

 1月28日、三都主がウクライナの強豪ドニプロとのテストマッチでデビューすると、ドリブルでDFを抜きさり、ヒールパスで相手を翻弄し、その質の高いテクニックでオーストリア人記者たちを唸らせた。

 試合後、オーストリアのインターネット大手の“スポーツ1”はこう報じた。

 「広告のために日本人を獲得したという“冗談”を言うものは、もう誰もいない。右サイドはハンガリー代表のボドナール。左サイドはアレックス(三都主)。これでチームは両サイドから、攻撃をしかけられるようになった」

 今まで左サイドバックには本来はセンターバックのドゥディッチが起用されていたが、トラパットーニGMも「ようやく本職の選手を手に入れられた」と喜んでいる。

 宮本恒靖もテストマッチの初戦こそミスから失点を招いたが、次第にオーストリアのサッカーに慣れ始めている。宮本の、周りから学ぼうとする姿勢をトラパットーニGMは高く評価している。

 「ドイツ語で挨拶したり、練習のときも周りの人間が何をしているか観察しているね。気に入ったよ」

 もし三都主と宮本が活躍すれば、今後ザルツブルクは日本人選手を継続的に獲得するプランを持っている。すでにオーストリア在住の日本人コーチに、チームのスタッフ入りを打診した。

 広告塔として利用されるのであれば、こちらもそれを利用すればいい。もしこの1年間で三都主と宮本が結果を出せれば、ザルツブルクを経由してよりレベルの高いリーグにステップアップしていくという新しい道が拓けるだろう。

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