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中堅チームの大躍進に、ひそかな下克上の夢を見る。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2004/11/26 00:00

中堅チームの大躍進に、ひそかな下克上の夢を見る。<Number Web> photograph by AFLO

 プレミアシップの順位表を眺めてみる。チェルシーとアーセナルが僅差で首位を争い、開幕から出遅れていたマンチェスター・ユナイテッドが、じわじわと順位を上げてきている。と、ここまで何ら驚くことはないのだが、ユナイテッドと共に3位の座を争っているのは、エバートン、ミドルズブラ、ボルトンと、いずれも欧州の晴れ舞台とは無縁の地味なクラブばかり。開幕直後ならばまだしも、クリスマスも近いこの時期に上位に顔を出しているとは大したものだ。

ミドルズブラに関しては、昨季のリーグカップ王者としてクラブ史上初のUEFAカップ参戦も実現し、開幕前には積極的な補強を行うなど、確かに明るい材料が揃っていた。しかしエバートンについては、後ろ向きな噂ばかりだった。クラブは80億円近い負債を抱え、ウェイン・ルーニー放出を巡る経営陣の対立も表面化。最終的には50億円を上回る額でユナイテッドにルーニーを売却したが、夏の移籍マーケットで代役を獲得する時間は残されてはいなかった。

そんな中でのエバートンの好調ぶりは、やはり、小粒なチームを上手くまとめ上げたデイビッド・モイーズ監督の手腕によるところが大きい。考えてみれば、02/03年シーズンの7位という好成績も、モイーズが並の選手の能力を最大限に引き出しながら残したものであった。モイーズの去就が取沙汰されていた時期もあったが、19歳の天才少年を上回るインパクトをもたらす41歳の監督に対し、クラブは2009年までの契約延長という、一足早いクリスマスプレゼントを贈った。

 もはや「万年降格候補」とは呼ばれなくなったボルトンだが、開幕から5位前後をキープするという展開はファンにとっても予想外だったに違いない。監督のサム・アラーダイスは、峠を越えたベテランやクセのある選手を「その気」にさせることにかけては超一流。今季も、レアル・マドリッドで頂点を極めてしまったフェルナンド・イエロのハートに再び火をつけたばかりか、リバプールをお払い箱になったエル・ハッジ・ディウフの再生にも取り組み、ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督をして「手強い」と評価させるチームを作り上げた。気の早いファンは、「来季はいよいよ欧州だ!」と期待に胸を膨らませていることだろう。可能性はある。

 順位表の下方に目を移すと、開幕以来、不甲斐ない結果に終始しているクラブが名を連ねているが、そんな中にも予想外の頑張りを見せているクラブがある。昨季、終盤に奇跡的な追い上げを見せ、プレーオフ経由でプレミアシップ昇格を勝ち取ったクリスタル・パレスだ。

ロンドンのクラブの中でもひときわ陰の薄いパレスは、開幕から2ヶ月近くリーグ最下位を独走し、いち早く「降格組」のレッテルを貼られていた。しかし、その後はアーセナルを相手に1-1の引分けを演じるなど、見応えのある戦いぶりを披露し、着実に降格圏内を脱出しつつある。

パレスの原動力はFWのアンディ・ジョンソン。昨季は28ゴールでリーグ(1部)得点王に輝き、その前年には、5試合で10得点という荒稼ぎをしている選手である。プレミアシップの得点王ランキングでも、現在、ティエリ・アンリに次ぐ同率の2位につけており(11月23日時点)、イングランド代表入りを望む声も聞かれるようになってきた。

ジョンソンは、母親方の祖父がポーランド生まれであることから、ポーランド代表を選択する権利も持っている。ポーランドとの繋がりに誇りを感じ、ポーランド国籍のパスポート取得も考えているというジョンソンは、ポーランド代表からラブコールがあれば、“No”とは言えないのではないだろうか。

 ポーランド代表のユニフォームに身を包んだジョンソンが、来年10月にオールド・トラフォードで行われるワールドカップ予選で、イングランド代表のゴールを脅かす。そして同じ頃、見事に上位5位以内で04/05年シーズンを終えたエバートン、ミドルズブラ、ボルトンら、プレミアシップのマイナー勢が、チャンピオンズリーグやUEFAカップの檜舞台でファンに夢を与える。有名クラブや強豪国の代表チームが順当に勝ちあがることを望む手合いには顰蹙を買いそうだが、個人的にはそんなシナリオも決して悪くはないと思っている。

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