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岡田ジャパンに足りない“遊び心”。
遠藤が単調な攻撃に危機感告白。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2010/02/08 12:05

岡田ジャパンに足りない“遊び心”。遠藤が単調な攻撃に危機感告白。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

遠藤が最も危機感を抱いているポイントはどこなのか?

 試合後、遠藤はいつものように淡々と試合を振り返ったが、チームの単調な攻撃に危機感を募らせていることは明らかだった。

「もっと意外性のあるプレーをしないと崩せない。言われたことを言われたとおりにやるのが日本人の悪いところだと思う。しっかりパスをつないで、とかだけではなくて、一か八かのボールを裏に出して岡崎が泥臭くボールを拾って、みたいなことが必要なのかな、と。

 たとえば(クロスを入れるときに)どこかでワンフェイントを入れるとか、そういう遊び心みたいなものを持たないと。チームのためになるなら、それはやるべきだと思う。トライしないと始まらないし、そこはやりたいと思う」

遠藤と岡田監督の「遊び心」は通じているが、実現せず。

「遊び心」――。

「ゆとりやしゃれ気のある気持ち」と辞書には書いてある。もちろん100%のファイトを前提としたうえで、部分的にゆとりやしゃれ気のあるプレーが随所に出てくれば、攻撃の臨機応変さにつながっていくようにも思う。

 これは岡田ジャパンのフィロソフィーのひとつ「ENJOY」にも当てはまる。攻守の切り替えの速さやパス&ムーブというコンセプト、それに勤勉さや攻撃のパターン化ばかりに気を取られすぎていて、遠藤が指摘する大事な要素が今の岡田ジャパンから抜け落ちているような気がしてならない。

 指揮官は昨年12月に招かれた講演会で「ENJOY」についてこんな内容の説明をしていた。

「ENJOYの究極は、自分の責任でリスクを冒すこと。日本の選手は『ミスをするな』と言ったら途端にミスを負わないようにリスクを冒さなくなる。でも『ミスをするな』といわれるなかで、いかに自分の責任でリスクを負えるか。それがスポーツのなかでのENJOYなんです」

チームにまだ浸透していない岡田監督の「ENJOY」哲学。

 ゴール前における工夫と迫力の欠如は、本当の意味でチームに「ENJOY」というフィロソフィーが浸透しきれていないからではないだろうか。

 岡田はマリノスの監督時代にも「ENJOY」を、チームフィロソフィーのひとつに入れている。「生き生きとしたプレーをしてほしい」という願いからだった。

 一人ひとりが「遊び心」を持ち、リスクを自分の責任で負って「ENJOY」することによって、ゴールに結びついていく。「ENJOY」の精神をチームで共有することが、得点力向上のきっかけになるように思えてならない。

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