ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
ブンデスで甦る“東欧のブラジル”。
~ドイツと旧ユーゴの濃密な関係~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byUniphoto Press
posted2009/11/12 10:30
若手主体のボスニア・ヘルツェゴビナ代表。トルコ、ベルギーを制しての予選2位は見事
ホッフェンハイムを支えるFW・MFコンビにも注目。
TSG1899ホッフェンハイムに所属する、FWベダト・イビセビッチとMFセヤト・サリホビッチもまたボスニア・ヘルツェゴビナ代表が誇る強力なコンビである。ともに、旧ユーゴ内戦で祖国を離れた経験の持ち主だ。
イビセビッチは、内戦が続いていた当時のユーゴを離れ、スイスを経由して、16歳でアメリカへ渡った。アメリカの大学でプレーしているときに、U-21の代表チームに招集され、それがきっかけでヨーロッパへと戻り、ホッフェンハイムにたどり着いた。昨季前半、昇格したばかりのホッフェンハイムがブンデスリーガを席巻したが、その中心にいたのがイビセビッチである。17試合で叩き出したゴールは18得点。昨季のウインターブレイク中に右膝の十字靭帯を断裂して後半戦を棒に振ってしまったが、必死のリハビリを経て本来の力を取り戻しつつある。先日のヘルタとの試合では、21分間でハットトリックを達成して、調子の上がっていることを証明してみせた。ゴールを量産する用意は出来ているようだ。
「今はもう100%の状態にあるよ。幸い、痛みも全くないからね」
7歳で戦火を逃れ国外へ……夢のW杯出場を目指す。
サリホビッチもまた、7歳のときに戦火を逃れるために祖国を離れ、ベルリンへやって来た。ヘルタ・ベルリンの下部組織に入り、プレーを続けていたが、出場機会に恵まれず、当時3部リーグに所属していたホッフェンハイムへ。そこからチームを引っ張って1部に導いた。彼の最大の魅力は、長短のパスを蹴り分ける正確なキック力だろう。さらに、本職のサイドMFはもちろん、トップ下、ボランチ、SBまでこなせるのも強みだ。
ポルトガルとの決戦に向けて、サリホビッチの鼻息は荒い。
「プレーオフはとてもハードな試合になる。でも、W杯に出場できる自信はあるよ。ロナウドを迎え撃つ準備もバッチリさ」
決戦は11月18日。歓喜の叫びを上げる国はどっちだ!?
ミシモビッチは、W杯出場の意義をこんな風に説いてみせた。
「僕らのような若い国にとって、W杯に出場するというのは本当に意味のあることなんだ。もし、出場できたら……そのときに味わえる喜びはちょっと想像できないよなぁ」
このプレーオフ、決着をつける2戦目は11月18日にボスニア・ヘルッエゴビナのゼニツァで行なわれる。その日、まだ戦争の傷跡残るあの国を包むのは、想像もつかないような喜びだろうか。それとも、かつて彼らが味わったような悲しみだろうか。