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死ぬほど走れ、岡田ジャパン。
~南アで番狂わせは起こせるか~
 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/07/13 11:30

死ぬほど走れ、岡田ジャパン。~南アで番狂わせは起こせるか~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

最新のFIFAランキングで日本は40位。ここからどのくらい走って走って走りまくれば「ベスト4」に食い込めるだろうか。

 僕が初めてワールドカップに出かけたのは'82年スペイン大会のことだった。それ以前のワールドカップについては、テレビ画面を通してしか知らない。'78年アルゼンチン大会は、中継された試合をほぼすべて観た。しかし後日、実際に現地で取材した先輩たちから体験談を聞かされると、激しい悔しさに襲われた。「サッカー好き比べ」で決定的な敗北を喫したような気がしたからだ。それが、スペイン大会に出かけていった大きな動機だった。

 来年の南アフリカ・ワールドカップは、その'78年アルゼンチン大会以来、32年ぶりに南半球で開催される。北半球でのワールドカップしか知らない僕にとっては、初めての経験になるわけだ。そうした意味で、とてもフレッシュな大会に思える。それが先のコンフェデ杯に取材に出かけた理由のひとつだ。何かを語るためには、下調べが不可欠だと思ったわけである。

「冬」の南アW杯、日本の勝機は「走る」ことにあり。

 現地の気候は「冬」だった。日中の最高気温は20度を超えたが、夜は冷え込んだ。大会が深まるにつれ、冬の気配は進行し、準決勝の日(6月24日)の最低気温はマイナス2度を記録した。決勝戦は来年7月11日。観戦にダウンジャケットは不可欠だ。

 僕が経験した'82年スペイン大会以降のワールドカップは、例外なく暑かった。選手たちは酷暑との戦いを余儀なくされ、サッカーの質に自ずとブレーキがかかった。「ワールドカップよりチャンピオンズリーグ」と言われるようになった理由のひとつでもある。

 サッカーにとっての最大の敵は、ズバリ暑さ。それが、来年のワールドカップ本大会にはない('14年ブラジル大会にも一部当てはまることだが、それはさておき)。選手には走り回れる環境が用意されている。追求すべきはその点にある。僕は自信を持ってそう言いたい。

「目標はベスト4」。岡田サンがいくらそう叫ぼうと、日本の現実はグループリーグで4番目のチームだ。ブックメーカーの優勝予想では40番目あたりにランクされている。そうした弱者が番狂わせを起こそうとしたとき、「走る」は必須のテーマになる。

 しかし、強者にも同様に走れる環境は用意される。ここ最近、チャンピオンズリーグで番狂わせが起きにくくなった理由は、そこにある。強者も走るサッカーを少なからず追求し、隙のないサッカーをすれば、弱者に付け入る余地はなくなる。

 来年のワールドカップ本大会にもそれは当てはまる。弱者は、ただ走るだけではダメだ。死ぬほど走らなければダメだ。効率も良くなければならない。

【次ページ】 岡田ジャパンは「走れる」南アで、いかに戦うのか?

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