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佐藤琢磨 グランプリに挑む Round 1 オーストラリアGP 

text by

西山平夫

西山平夫Hirao Nishiyama

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photograph byMamoru Atsuta

posted2004/03/12 00:00

佐藤琢磨 グランプリに挑む Round 1 オーストラリアGP<Number Web> photograph by Mamoru Atsuta

 「もう一本! という感じでしたね」

 予選が終った直後の佐藤琢磨は笑いながらもちょっと不本意そうな表情を見せた。その笑顔にメルボルンの強い日差しがまぶしい。

 惜しかった。2回目予選の出走順位を決めるための1回目予選で、琢磨はマシンと格闘していた。オンボード・カメラはリヤが暴れるマシンに2回もフルカウンターを当てる琢磨を映し出していた。それでは好タイムは望めない。

 1回目の出走順は昨年最終戦の日本グランプリ成績順。つまり鈴鹿で6位だった琢磨は6番手で、5人一組をワングループで区切る第2グループのトップランナー。ところがオーバーステアが強過ぎ、タイムは10番手となった。

「午前中、駆動系のトラブルが出て新品タイヤでアタックする時間がなく、セッティングの最終確認ができなかったんです」

 その結果がオーバーステアになって表れたわけだが、2回目アタックに備えて琢磨と担当エンジニアのジョグ・クレアはアンダーステア方向にセッティングを振った。これはほぼ正解で予選ポジションは自己最高位タイの7位を得た。

 それでも「最終セクターでちょっとアンダーステアが強くなり過ぎました。ただ、セッティングが思い通りならあと0.5秒は速かったでしょう」というのは午前中のトラブルがなければ……の思いが強かったからだろう。思わず「もう一本!」と言ったのは、セッティングがバッチリ決まった状態でもう一回フルアタックしてみたかったからだろう。

 決勝はすばらしいダッシュを決め、予選4位のチームメイト、バトンに並びかけるところまで行った。ところがあまりにスタートが良すぎて、前が詰まってしまい、トゥルーリに追突。ノーズカウルとフロント・ウイングに大きなダメージを負い、2回目ピットストップでノーズ・セクションをそっくり交換するまでペースが上がらなかった。追突は仕方ないにしても、チームサイドが1回目ピットストップ時にノーズ交換の判断を下せなかったものか、と思うが、レースに"たら……れば……"はない。琢磨の再出発緒戦はポイントにあと一歩の9位。その原因を辿れば、ウィンターテストの最終仕上げで新車に新品タイヤを装着してアタックできなかったことに行き当たる。その経験があればもっと予選ポジションがよかったかもしれず、予選がよければスタートの1コーナーのアクシデントはなかっただろう。しかし、悔やんでも始まらない。

「スタートもよかったし、クルマの信頼性も確認できました。ノーズを換えた後はウイリアムズと同じペースで走れたから、じゅうぶん戦える。次のマレーシアでは予選で自己ベストを更新して今日の結果を上回りたい」と、レース後琢磨は気持ちを切り替えていた。予選、そして決勝と、ハプニングがあっても必ずリカバリーできるところが2年前の初参戦の時とは違う。月並みな言葉だが琢磨は大きく成長し、チームもまたそれに応えられる体制を整えてきた。

 琢磨はいま早くもマレーシア入りして、高温多湿の気候に身体を馴らしているところだ。そのコンディショニングの成果は必ず速さとなって報われるだろう。3月21日現地午後3時のスタートが待ち切れないのである。

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