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日産自動車の休部によって、
社会人野球の良さが失われる。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph bySPORTS NIPPON

posted2009/09/13 08:00

日産自動車の休部によって、社会人野球の良さが失われる。<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

日産自動車は今年の都市対抗野球の準決勝でトヨタ自動車と対戦し、投手戦の末1-0で敗れ、3位に終わった

 社会人野球の晴れ舞台・都市対抗野球に29回出場、優勝2回、秋の全国大会・日本選手権に15回出場、優勝1回――これは、今季限りでの休部が決まった日産自動車硬式野球部の主な実績である。

 プロ入り選手は過去5年に限定しても押本健彦(ヤクルト)、三橋直樹、高崎健太郎(横浜)、梵英心、青木高広(広島)、野上亮磨(西武)の6人を数え、しかも彼らは一軍で活躍している。まさに名門というにふさわしい実績を残しており、先ごろ行なわれた都市対抗野球でもベスト4にまで進出している。

高校卒の選手が多い珍しいチーム。

 この日産自動車が異色なのは、高校卒の選手が多いことで、部員26人中7人を占める。先に紹介した過去5年間のプロ入り選手を見ても、押本(中央学院)、高崎(鎮西)、野上(神村学園)の3人が高校卒である。ちなみに、今年のチームにも熊代聖人(今治西・内野手)というドラフト有力候補がいる。こういうチームは社会人野球において非常に珍しく、これは監督、コーチの選手育成に対する自信を物語っている。

 今の社会人野球は大学卒の選手が多い。社会人野球雑誌『グランドスラム』(小学館)の第33号によると、日本生命は高校卒が0人、パナソニック、NTT西日本は高校卒が2人と、大学卒優位の数字が続いていく。不況下では選手を育成する余裕がないので、有名企業ほどすでに出来上がった大学生を獲りにいくという現実が反映されている。

 高校生にとって、激減している社会人野球チームに入るのは非常に狭き門で、強豪チームの高校卒新人の入部者数は、新日本石油が5人中1人、トヨタ自動車が4人中1人、ホンダが4人中1人、日本通運が5人中0人、JR東日本が6人中1人という少なさである。

地方大学の台頭に拍車をかけた社会人野球の狭き門。

 これほど社会人が大学卒でいっぱいになると、高校球児が目指すところは、即プロ入りを除けば大学か独立リーグしかないが、そうした状況が近年の地方に根を張る大学勢の頑張りにつながっているのは確かである。今年の大学選手権ベスト4進出校が新興勢力の関西国際大、富士大、創価大であるのは象徴的だろう。

 地方大学の隆盛はもちろん歓迎できる。だが、その裏には社会人野球の衰退という現実があるので、手放しでは喜べない。まして、日産自動車の首脳陣は選手育成能力の高い技術者集団で、それが部の消滅と同時に分散するのである。社会人野球の良質の部分が1つなくなったと言っても過言ではない。

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