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各クラブのモチベーション事情。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2004/11/22 00:00

各クラブのモチベーション事情。<Number Web> photograph by AFLO

 アーセナルが、今季もチャンピオンズリーグで苦戦を強いられている。グループリーグの「マッチデイ4」を終了した段階で2位。伏兵PSVに首位を走られ、3位パナシナイコスに勝ち点1差で追われている。

 チャンピオンズリーグ出場は、今季で6季連続。毎度、優勝候補の一角に挙げられながら、最高位はベスト8。昨季もチェルシーに準々決勝で敗れている。

ベルカンプが飛行機に乗れないが故に、アウェー戦に弱みを抱える内弁慶なのだというのが、よく言われる理由だが、だからといってホームで強さを発揮しているわけでもない。本質は別のところにあると思う。

 繰り返すが、アーセナルは毎度優勝候補に推される強豪ながら最高位はベスト8だ。原因はこの予想と結果のズレにあると見る。大抵の場合、対戦相手は格下で、アーセナルに対し、敗れて元々といつも果敢に挑んでくる。アーセナルは受けて立たなくてはならない。アーセナルが、なりふり構わず向かっていける相手はそう多くない。チャンピオンズリーグにおいては、チャレンジャーの身であるにもかかわらず、だ。昨季の準々決勝しかり。思い切りぶち当たっていったのは、プレミアリーグでアーセナルの後塵を拝していたチェルシーだ。前評判と実績との差が、アーセナルほど著しいチームは珍しい。

 チェルシーは、大金持ちクラブと言われるが、チャレンジャー精神は今季も相変わらずアーセナル以上にある。マンチェスターUもしかりだ。アーセナル以上の実績を持ち合わせているにもかかわらず、捨てるモノはアーセナル以上にはない。案外フレッシュだ。

 前評判が高くて、チャレンジャー精神も旺盛なチーム。つまりアーセナルと対極にあるチームといえば、バルセロナになるだろう。欧州屈指の名門チームながら、チャンピオンズリーグ優勝はわずかに一度。9回勝っている宿敵レアル・マドリーとは著しい差がある。また、国内リーグでもしばらく優勝から遠ざかっている。選手のクオリティーも高ければ、モチベーションも高い。とても良いバランスでチャンピオンズリーグに臨んでいる。

 イタリアでは、ミランよりユベントスに良いムードを感じる。モチベーションは高そうだ。ミランは一昨季の優勝チーム。対するユベントスは準優勝。優勝は9シーズン前まで遡らなければならない。チャレンジャー精神は高いと考えるのが自然だ。問題はホーム「デッレ・アルピ」の寒々しい客の入りだ。ユーベ人気は全国区。地元トリノにファンは少ない。チャンピオンズリーグが開催されるのは平日の火、水曜日で、開始時間は20時45分。遠方から訪れにくい条件下にある。チームのモチベーションが、スタジアムのムードに反映されにくいハンディを抱えている。

 その点、インテルは恵まれている。チャレンジャー精神は十分だし、モチベーションも、集客力も高い。さらに言えば、メンバーも悪くない。おっちょこちょいというか、情緒不安定というか、ともかくこのチームにいつの間にか根付いてしまった奇妙な病状は相変わらず心配されるが、流れは徐々に悪くない方向に進んでいる。

 ポルトが優勝した昨季のチャンピオンズリーグといい、ギリシャが優勝した今年のユーロ2004といい、このところ続出する番狂わせの背景には、戦力の関係とモチベーションの関係が密接に絡んでいる。戦力で勝っても、受けて立ってしまうと、強者と弱者の関係は途端にひっくり返る。

 強者にとって怖いのは、マンネリ以外の何ものでもない。いかにして新鮮さを保つか。ユーロ2004で、グループリーグで消えてしまった「フランス」っぽいチームは、僕にはとても危なっかしくみえる。

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