佐藤琢磨・中嶋一貴 日本人ドライバーの戦いBACK NUMBER
ヨーロッパでの苦闘を終えて。
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2008/09/17 00:00
9月14日、イタリアは雨のモンツァで、中嶋一貴のヨーロッパ・ラウンドが終わった。
第11戦ハンガリーの後は3週間のインターバルがあり、短い夏休みを日本で「友達とサッカーしたり、甲子園やオリンピックをTVで観たりして意外に忙しかった(笑)」数日間を過ごした後、F1初開催のバレンシア(ヨーロッパ・グランプリ)に飛び、2週間後にベルギー、連戦でイタリアを戦ってヨーロッパ・ラウンドを打ち上げたのだ。ちなみにオリンピックの感想を訊かれた一貴は「100、200平泳ぎの北島選手は凄かった。金メダルは堅いと言われる中で、世界新でメダルを獲るのは凄い」と感歎していたものである。
初開催のバレンシアはマリーナに隣接して企画されたストリート・サーキット。コースを一周歩いて確認した一貴は「走って面白そうなコースですね」と言っていたが、きついコーナーを長いストレートが結ぶレイアウトと自分の走りのリズムが合ったか、3戦ぶりにQ1を突破し、Q2進出。惜しくも100分の11秒差でトップ10入りを逃したが、シーズン最上位の予選11位をゲット。決勝に期待がかかった。
ところが、スタートで「路面のグリップが良すぎてクラッチが早く繋がって」エンスト寸前の出遅れ。しかも前にいたアロンソがさらにその前にいたブルデーのミスでアクセルを離したため、一貴が追突。アロンソはリタイア、一貴自身もフロントを傷めてしまい、実質的にこの時点で得点圏外に沈んで15位フィニッシュ。それでも終盤は“オーバーテイク不可能”とされるコースの最終コーナーでバリチェロを見事にパス。数少ないオーバーテイク・シーンを見せてくれたが、それだけにスタートの出遅れが惜しかった。
2週間後のベルギーは海抜数mのバレンシアとは一転、標高数百mの山岳サーキット、スパ-フランコルシャン。ここは中・高速コーナー主体のコースで、しかも供給されるタイヤが4種類のうち硬いレンジの2種類。一貴は「ウチのクルマにいちばん合わないパターン」と言っていたが、悪いことにその予想が当たって予選19位とシーズン・ワースト。スタートの1コーナーでフィジケラと接触していきなり難しいレースとなり、14位でフィニッシュするのがやっとだった。
これではならじとやって来たモンツァは「事前テストでいい感触があった」ことと、超高速ストップ&ゴー・タイプでウィリアムズ・トヨタ向きのコースであるだけに挽回可能。事実、土曜日午前中のプラクティスでは5位のタイムを記録するなど、久しぶりの得点のチャンスかと見えた。チームメイトのロズベルグも3位のタイムを出している。
だが、雨の予選では終始渋滞の中に入ってしまい「ブレーキの感覚がつかめなくて……」18位とQ1敗退。予選と同じく雨となった決勝はピットスタートで活路を求め、1回ピットストップ作戦もうまく当たって好ペースで周回。予選ポジションがポジションだっただけにチェッカーは12位だったが、一貴自身は「レース内容には満足しています。次のシンガポールからは一から出直し、バレンシアのようにいい流れにしたい」と締め括った。
今シーズンも残るはフライアウェイの4戦のみ。ここまでの14戦を一貴とロズベルグとの星取り表で比較すると予選は2:12とまったく分が悪いが、レースの上位フィニッシュで見ると5:8とそれほど差し込まれていない。得点は8:9で遜色はないし、入賞回数は4:4とイーブン。シンガポールからの巻き返しに期待しようではないか。