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全て計算通り。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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posted2007/11/22 00:00

全て計算通り。<Number Web> photograph by AFLO

 エブエ(アーセナル)、Y・トゥーレ(バルサ)、ドログバ(チェルシー)、アブドゥルカデル・ケイタ(リヨン)……。チャンピオンズリーグ第4節に出場した、コートジボワール人選手は計7人。

 ナイジェリア4人。マリ、セネガル各3人。ガーナ、カメルーン、モロッコ各2人、ギニア、コンゴ、トーゴ各1人。アフリカ人選手の台頭が著しいことは、計26人というその数からもうかがい知れる。帰化して欧州人になった選手まで加えると、アフリカ系選手の総数は50人を有に超える。

 これは、チャンピオンズリーグの国籍別出場者の数でトップに立つブラジル人選手とほぼ同じ数字になる。ブラジルは国。アフリカは大陸。アフリカ系の選手たちをブラジル人と同等に扱うことはできないが、アフリカンパワーの台頭を示す物差しにはなる。

 以前このコラムで、チャンピオンズリーグを戦っていくうえで、ブラジル人をどう活かすかがポイントだと述べた記憶があるが、それと同じことはアフリカ系選手についても言える。他にはないスピードやパワーなどを、チームプレーにどう反映させるかは、チャンピオンズリーグを戦う上で、重要なポイントになる。

 また、僕が見ている限り、アフリカ系の選手はおおむね勤勉だ。独創的なプレーに及ぼうとする癖は、ブラジル人より遥かに少ない。エトーやドログバに象徴されるように、守備に対しても忠実な選手が多い。

 今季のアーセナルを見ていると、つくづくそう思う。アーセナルのアフリカ系選手たちは、作戦通りに完璧な行動を取っている。そしてブラジル人が登場する機会は少ない。昨季までスタメンを張っていたジウベルト・シウバは、ベンチを温める機会が目立つのだ。

 アーセナルの戦いを見ていて、ふと、昨年のドイツW杯でのコートジボワールを思い出した。

 オランダ、アルゼンチンと同じグループで戦ったコートジボワールは、両強豪に対して1−2のスコアで惜敗した。内容的には互角以上の戦いをした。圧倒する場面さえあった。どちらが強者か、分からないほどだった。弱者に足下をすくわれている強者のようにさえ見えた。

 ただ、試合運びが下手だったのだ。凄いけれど単調。その間隙をオランダ、アルゼンチンに突かれた恰好だった。

 「交通整理」のできる選手が1人いれば優勝候補なのに……とは、その時に抱いた感想だ。その思いはいま、いっそう確信に近づいている。

 アーセナルのセスク・ファブレガスこそ、まさに「交通整理」のできる選手。彼がもしコートジボワール人なら、次回2010年大会でコートジボワールは優勝できるのではないかと思ってしまう。

 それはつまり、アーセナルは強いゾって話なのだが、いつかも触れたように、その一方で面白みという点では今ひとつだ。あまりにも計算通りに、事が運びすぎるのだ。無駄は一切存在しない。コンピューターゲームを見ているような錯覚に陥る。

 するとブラジル人が、無性にラブリーな存在に思えてくる。時に戦術から外れてでも独創性に富んだプレーに及ぼうとする彼らは、エンターテインメントに不可欠な「うま味成分」と言っても過言ではない。どこか笑いの要素さえも備えている。

 そこで注目したいのが、アーセナルが次週、第5節で対戦するセビージャになる。ブラジルとアフリカと欧州と。バランスは取れている。今季ここまでの成績はパッとしないが、アーセナルに好勝負が挑める数少ないチームであることは事実。アーセナルホームで行われた初戦では0−3で敗れているが、内容は拮抗していた。楽しみな試合だ。

 最後に、例外について一言。つまりアフリカ系選手の姿をあまり多く見かけないという意味だが、ブンデスリーガが、それに該当するのは、どういう理由からだろうか。このところ、チャンピオンズリーグでドイツ勢の成績がサッパリ振るわない理由と、それなりに関係があることは間違いないはずだが……。

アーセナル
欧州チャンピオンズリーグ

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