ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
スタジアムから見える
ブンデス流観戦哲学。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2009/08/07 11:30
ヴォルフスブルクのホーム、フォルクスワーゲン・アレナも収容人員は3万程度。ほぼ全試合満員状態だ
新しいシーズンを迎えるにあたり、各クラブが使用するスタジアムの周りは少しずつ変化を見せている。新シーズンのユニフォームに身を包んだ選手のポスターが貼られたり、新たなスポンサーの看板が置かれたり。そんな中で目立つのが、2011年にドイツで行なわれる女子ワールドカップをPRするポスターや看板だ。実際にW杯の会場となるスタジアムでは、それが顕著である。
女子W杯の会場を調べてみると、ドイツ代表がグループリーグの3試合で使用するベルリン、フランクフルト、メンヒェングラットバッハのスタジアムを除けば、残りの6会場は収容人数が約3万人か、それ以下のサッカー専用スタジアムだ。2006年のW杯の会場の多くが5~6万人収容のスタジアムだったことに比べると、規模は小さい。男子のW杯ほど女子W杯に観客が集まらないのは明らかで、この選択は賢明だ。しかも、前回の女子W杯の平均観客動員数が3万1169人であることを考えると、2年後の大会ではどの会場もほぼ満員の状態になるのではないかと期待が高まる。
観客動員数ではなく“収容率”を重視する、その理由とは?
実際にドイツに住んでみて私が感じたのは、2006年のW杯で使われたような5~6万人収容のスタジアムとは別に、3万人程度の収容規模のスタジアムが数多く存在するということだった。
昨季のチャンピオンのヴォルフスブルク、チャンピオンズリーグで準優勝したこともあるレバークーゼン、昨季の前半戦を首位で折り返して旋風を巻き起こしたホッフェンハイム、小野伸二のプレーするボーフムのスタジアムの収容人数は、いずれも3万人前後だ。
ドイツのスポーツ誌「キッカー」では各スタジアムの観客動員数を表にして掲載するが、観客動員数のとなりには必ず収容率が記されている。これは観客「数」よりも収容「率」を高めることがドイツでは求められているからだ。
2006年W杯向けに改修されたハンブルクのスタジアムでもフランクフルトのスタジアムでも、実は改修前に比べて収容人数は減らされている。しかし、両スタジアムを本拠地にするハンブルガーSVとアイントラハト・フランクフルトの観客動員数は、ともに以前より増え、収容率も大幅に向上している。
昨シーズンのブンデスリーガにおける平均収容率はおよそ89%。これも、7万4244人収容のオリンピアシュタディオンをホームとするヘルタ・ベルリンの平均収容率が約68%と、全体の平均を大きく下げているためで、ヘルタ以外は軒並み90%を超える計算になる。
なぜ収容率を高めるのか。最大の理由は雰囲気作りだ。満員の観衆の前でプレーすることで、ホームチームが大きなアドバンテージが得られる。きわめてシンプルだ。先に挙げた「キッカー」誌の順位表の話にはおまけがあって、順位表には必ずホームゲームとアウェイゲーム、それぞれの成績も併記されている。