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バルサ復活を支える頭脳。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
posted2005/05/26 11:29
いよいよ王手をかけた6年ぶりのリーガ優勝は、実は綿密に練られた計画の一部だった!と書くと大仰だが、今季のバルサの快進撃は、ラポルタ会長のクラブ運営策にぴったりはまっている。
強いチームを持てばスポンサーの信頼を得ることができ、経済的に潤えばチームをまた強化できるという「好循環」。これがラポルタ会長一流の理論であり、FCバルセロナの基本方針でもある。今シーズンのリーガを独走してきたチームのおかげで、これが本格的に始まったようだ。5月1日のアルバセテ戦に快勝した翌日、現場に関わるマーケティング部の最高責任者マルク・イングラ副会長に、まずはクラブの財政状況を尋ねた。
「我々が舵を取る以前のクラブは年間7700万ユーロ(約105億円)の赤字を出していたけれど、今季は1500万ユーロ(約20億円)ほどの黒字が見込まれている。収入だけみれば、2年でおよそ倍になった」
先代のやり方がよほど悪かったのか、はたまた「革新的な経営モデルを取り入れ、さまざまな分野のプロフェッショナルをそろえる」ところから始めたラポルタ体制が極めて優れているのか。いずれにしても、バルサはすでに良い方向へと転がり出している。
外部の人間でさえ実感できるときがある。
ショップの人いきれにうんざりするようになったのはちょうど1年ぐらい前、チームが17戦無敗を続けていた頃だろうか。子供の手を引いたお父さんから女の子だけのグループまで、いまやレジの前の列が途絶えることはない。チーム関連商品による収入は、今季45%増したそうだ。試合のスタンドには、同じ頃から家族連れが目立つようになった。入場券収入が75%アップしたのも当然だ。
ラポルタのいう循環を滑らかにするには、バルサを魅力あるクラブにしなければならない。そのためには、チームが面白いサッカーをして、試合に勝つことが必要とイングラ副会長はいう。となると、ユニフォーム販売に精を出すどこかのクラブのように、宣伝効果を考えての補強をチームに進言することはあるのだろうか。
「あり得ないね。チーム作りは100%『サッカー』を考慮して行われている」
その「どこかのクラブ」は、スペイン国内におけるサッカーマーケティングの先駆者でもある。レアル・マドリーを参考にしたことはあるのか。無粋を承知で聞いてみた。
「あそこのやり方に興味はない。それよりバルサは独自のモデルを持っている。即ち、まずは攻撃的なチームを作り、魅力的なサッカーをする。そうすればビジネスチャンスは自ずと生まれるというものだ。我々は我々のやり方でバルサブランドとバルサへの共感を広めようしている。たとえば、子供向けに選手をアニメ化したクラブは世界で初めてだよ」
(以下、Number628号へ)