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松井大輔&長谷部誠 挑戦者は躊躇している。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki/Tsutomu Kishimoto
posted2008/06/26 18:21
松井は、代表に合流した時、自らの役割について、こんなことを言った。
「このチームはパスが主体なんで、自分はドリブルやDFの裏に抜ける動きとかでアクセントを付けられたらいい。それを常に意識してプレーしたいですね」
フランスのルマンで4年間主力であり続け、評価されたのも、ドリブルや意表を突くパスなど攻撃のアクセントとなるプレーだ。その“売り”があったからこそ、名門サンテティエンヌ移籍のチャンスも得た。サイドから仕掛けてゴールに絡む。そこに松井はプライドを抱いていた。
だが、キリンカップでは、なかなかサイドから展開できなかった。ボールを持てるせいか、みな内へ内へと入る。サイドチェンジしてもスピードアップできず、松井にボールが届く頃には、DFが待ち構え、突破が難しくなっていた。ダイレクトパスも連携不足で繋がらない。首を傾げ、足を止め、腰に手をやり、考えるシーンが自然と増えた。
「サイドの使い方がうまく出来ていない」
それは、チームの中で自分自身が生かされていない、生きていないのと同義語だった。
長谷部は、ボランチを任された。
ドイツのヴォルフスブルグでは、主に右MFとしてプレーしていた。1対1の勝負からボールを奪い、縦へと向かうドイツ・スタイルを、わずか4カ月で身体に染み込ませた。キリンカップでも1対1での守備では負けない強さを見せた。黙々とプレーする選手が多いなか、声を張り上げ、指示を出す。
だが、1人で行くことが多い守備に連動性はなかった。攻撃でも、周囲とリズムや呼吸が噛み合わず、無人のスペースにボールが転がるシーンもあった。単純な連携ミスも多く、リズムに乗れていない感じだった。
「うーん、連携は……まぁ初めてやる人もいるんで……。でも、みんな能力高いからチームとしてやるべきことを理解していれば、良くなると思っています。とにかく今は、自分ができることをやっていくしかないですね」
言葉に澱みはないが、遠くを見る視線には、押し隠そうとする不安が垣間見えた。
欧州での経験をうまく日本代表に活かしきれず、噛みあわない。チームとどう調和するかが、課題として浮かび上がっていた。