Number ExBACK NUMBER
松井大輔&長谷部誠 挑戦者は躊躇している。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoya Sanuki/Tsutomu Kishimoto
posted2008/06/26 18:21
期待されての初のW杯予選は、まさに“消化不良”で終わった。
6月2日、横浜でのオマーン戦。中澤の豪快ヘッドで先制し、3-0と完勝を収めるこの試合で、松井は左MF、長谷部は遠藤とダブルボランチを組んでスタメン出場する。
試合前日、長谷部は、攻撃のイメージを頭の中で描き、気合いも入っていた。
「引いてくる相手に対しては、真ん中よりもサイドから崩したほうがいいんで、サイドから人数をかけて攻めたい。中盤には(中村)俊さんを始めタメを作れる選手が多いんで、うまく利用して自分が上がれればいいかな」
──初めてのW杯予選だけど。
「そうですね。大事なのは気持ち。勝ちたいという気持ちを強く試合に出せるかが大きなポイントだけど、あまり気負いすぎずにやりたいです。ただ、日本の代表としてプレーするんで、責任や誇りを持って戦う」
しかし、明らかに長谷部は気負っていた。遠藤とボランチを組むのは初、しかもどちらも攻撃的な選手だ。守備に転じた時のバランスをどう取るのか、そればかりに気をとられる一戦となった。幸い、守備での難しい局面はなかったものの、肝心の攻撃面でパスミスを連発。前に上がるタイミングもうまく掴めず、らしくないプレーを続けた。
松井も前日、攻撃の青写真を具体的に描いていた。
「相手は、引いてくることが予想されるんで、サイドからの攻撃が効果的。サイドチェンジした時にスピードアップして崩すか、それが出来なければ中に入ってどんどんシュートを打っていく。そうしたらDFが前に出てくると思うんで、そこでドリブルとかワンツーとかで崩していきたいです」
──気持ちも入っているようだね。
「W杯予選ですからね。ペース配分とか考えず、最初からエンジン全開でいきますよ。気持ちを前に、身体を投げ出すぐらいの意識でやらないといけない。1個のボールに対して集中して、死ぬ気でやらないと見ている人やサポーターの人に申し訳ないでしょう」
そして臨んだ試合。左サイドでタメを作り、背後を駆け上がる長友とチャンスを作った。だが、前日にやりたいと言っていたプレーはできなかった。スペースがなく、横にドリブルしてはDFに詰められ、仕方なくバックパスをする姿は、どこか哀し気に見えたほどだ。
それでも後半4分、左サイドからドリブルを仕掛け、DFに当たられて体勢を崩しながらも中村俊にパス。玉田と大久保が連動して走ってDFを引き付け、中村がゴール。鮮やかな3点目の起点となる活躍を見せた。
だが、松井の表情は鉄のように冷たかった。
(続きは Number706号 で)