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キリンカップの意義とは。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
posted2005/05/26 00:00
言うまでもなく、キリンカップは重要な意味を持つ大会である。ジーコ監督のもとで2年半以上の積み重ねがあるとはいえ、3月30日のバーレーン戦からは約2カ月のインターバルがある。ペルーとUAEとの連戦を消化することで、選手たちは所属クラブの戦いに慣れていた身体を、代表モードにシフトしていかなければならない。
そのうえで、内容と結果の両立が求められる。昨夏のアジアカップ制覇は、直前のキリンカップ優勝の流れを持続できたことが大きかった。今大会が単なるスパーリングではない理由がそこにある。ジーコ監督は言う。
「真剣さがあってこそ準備の要素が生まれてくる。最終予選突破のためにも、練習試合にしてはいけない」
5月9日に発表されたメンバーは、これまでの流れをほぼ踏襲するものとなった。6月に控えるワールドカップ最終予選を見据えてのポイントは、やはり中盤の構成になる。
システムは3-5-2だろう。イラン戦の4-4-2が悪かったというつもりはない。ただ、3バックのほうがチーム全体の動きがスムーズで、かつ選手個々の特長が発揮されやすいのは明らかである。
多くの選手に共通する「3バックのほうがしっくりくる」といった声は、ジーコ監督にも届いている。このブラジル人指揮官は、選手の意見を尊重するタイプである。招集されたメンバーに大きな変化がないことからも、再び4バックに戻すとは考えにくい。
となると、注目はダブルボランチだ。
現状のベストチョイスは、〈福西崇史×小野伸二〉と理解するのが自然だろう。最激戦区のボランチにあって、彼らはジーコ監督からとびきり厚い信頼を受けている。
4-4-2で臨んだ3月のイラン戦も、ダブルボランチは〈福西×小野〉だった。お互いの役割が明確で、それぞれの個性を消し合うことのない2人のコンビネーションは、ゲームを落ち着かせる能力にひと際優れている。
今回のキリンカップでは、小野が第2戦からの合流となる。福西は右足太もも裏に痛みを抱えている。メンバー入りは回復のメドが立っているからだろうが、照準はあくまで最終予選だ。無理をさせるのは得策でない。
付け加えれば、福西は先のイラン戦でイエローカードをもらっている。累積警告での出場停止にリーチがかかっている彼の不在は、早ければ北朝鮮戦で直面する緊急事態だ。バーレーン戦の結果次第では予選突破がかかるゲームとなるだけに、福西抜きのダブルボランチは想定しておくべきである。
そこで浮上してくるのが稲本潤一だ。
昨年6月の負傷以降はスタメンから遠ざかっている稲本だが、ジーコ監督の評価が下がっているわけではない。最終予選の過去3試合でメンバー入りや先発出場が見送られたのは、福西の充実ぶりが第一の理由であり、代表から遠ざかっていた稲本をいきなり最終予選で起用するのは、過度のプレッシャーを背負わせることになるという判断からだった。
(以下、Number628号へ)