ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

キリン・カップ(2005年5月22日)VSペルー 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2005/05/24 00:00

キリン・カップ(2005年5月22日)VSペルー<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

 試合後の記者会見に現れたジーコ日本代表監督は、憮然としていた。

 5月22日、日本は新潟スタジアムで行われたキリンカップのペルー戦で、ロスタイムにカウンターから失点し、初戦を1−0で落とした。

 敗戦という結果以上に、警戒していた形で相手にゴールを与えてしまったことが、監督の表情を渋くしていたに違いない。

 6月3日に敵地でバーレーン、同8日にはバンコクで北朝鮮とW杯最終予選を戦う日本にとって、今年のキリンカップはチームの状態を最終確認する貴重な機会になっている。バーレーン戦の勝ち点で、日本の本大会行きに王手をかけることができるのだが、そのバーレーンが得意とし、日本が警戒しているのが相手のカウンター攻撃だ。

 ペルーは国内でプレーする選手で来日チームを構成。若手も多く、W杯予選で戦っているメンバーとはかなり顔ぶれが違っていたが、前任者の突然の辞任で今月から指揮を執るテルネロ監督へのアピールもあったのだろう。しっかり守ってカウンターで攻める、というチームの意思統一はよく表われていたし、ペルーの中盤でのプレスが日本選手を悩ませていた。

 日本は、選手同士の距離が空いてパスがつながらない。特に玉田、鈴木の先発2トップへの縦へのボールが通らず、この日右サイドで積極的にプレーした三浦淳宏からのクロスも、上背があって体格のいいペルー守備陣に跳ね返されて、なかなか攻撃のリズムが作れない。

 停滞感を漂わせたまま前半を終えたが、後半はFW大黒とMF稲本が登場すると、チーム全体の動きが大きく変わった。特に大黒の鋭い切り替えしからゴールへ向かうプレーは、チームを活性化し、決定的なチャンスを何回かもたらした。

 ただ、どのシュートも枠をとらえることができない。

 「完璧な体勢でないと、打ち急いでしまう」とジーコ監督も日本選手のシュートの欠点を改めて指摘した。これまでに何度も選手に言ってきたことを、この期に及んでまで口にしなくてはならない相変わらずの現状には、頭が痛かったに違いない。

 得点を決めることができないのならば、チームは無失点できっちりと引き分けることを徹底すべきだっただろう。それは、来るW杯予選2連戦を想定して、抑えておくべき基本的で重要なスキルだ。だが、失点の場面は得点を狙って縦にいれたボールを、クリアから逆襲につながれた。

 ジーコ監督は、「チャンスも作ったし、いい形も作った。勝負を分けるところをしっかりとらえてやっていけば、必ずいい結果につながると思う」と話した。裏を返せば、どこが勝負を分けるポイントか、まだ選手は十分わかっていないということだ。

 指揮官の頭の中には、昨年、キリンカップ優勝という勢いをアジアカップに持ち込んでアジア王者に輝いたという記憶がある。今回の試合を前に、今年も勝って、その後のW杯予選へいい形でつなげたいとコメントしていた。

 確かに、勝てば勢いがつく。だが、負けた試合から学ぶことは多い。

 後半改善されたプレーを見ても、この敗戦をむやみに悲観する必要はないだろう。大一番を前にして修正すべき課題が示されたことをプラスととらえればいい。少なくとも、試合終了間際のカウンターからの失点という“勝負を分けるポイント”は、この試合で選手の頭と体に叩き込まれたに違いない。あとは、同じ間違いを繰り返さないことだ。

 「いい練習にはなった」とDF宮本は言い、大黒も「自分らしいプレーを出せた。でも動きはよくてもシュートを入れないとダメ。またシュート練習します」と話した。

 本番前にもう一試合。日本は、27日に国立競技場でアラブ首長国連邦と対戦する。

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