濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
パンクラスのメインを張った女子選手。
歴史の重みとも戦ったWINDYとV.V。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/04/13 10:30
WINDY智美(右)は27歳にして総合、キックなど合わせて40戦以上のキャリアを重ねてきたエース的存在。対する、V.V Meiも28歳にして「ヴァルキリー」のフェザー級王者と、ともに日本女子格闘技界を代表する選手である
メインである以上、観客が期待するのはKOか一本。
判定は2-0。勝利したのはV.Vだった。
1ラウンドに寝技で攻勢をかけ、2ラウンドにも積極的にテイクダウンを狙ったのが評価された結果だろう。
試合後、V.Vは「WINDY選手のおかげで、熱い試合ができた」としながらも「いつもながら課題がたくさんありますね」という言葉も残している。
メインイベントである以上、観客が期待するのはKOか一本での決着だ。打撃と寝技、互いの個性を出し合う展開は、同時に個性の潰し合いでもあった。どちらも自分のやりたいことを100%出しつくしたわけではなかったのだ。そのことを、V.Vは充分に理解していた。
パンクラスでメインを張ることの意味とは?
V.Vの後にインタビュースペースに現れたWINDYの第一声は「悔しいですね。泣きたいです。でも泣いちゃいけない」だった。だが言葉を進めるうちに目に涙があふれ、やがてそれは抑えきれないものになっていった。
「最後の1秒まで殴りたかった。パンクラスを背負った闘いで負けちゃいけなかったのに……」
パンクラスに所属し、主戦場としてきたWINDYにとって、メインイベントに出場する意味はあまりにも重かった。以前に比べ興行規模が小さくなっているとはいえ、“パンクラスのメインイベント”とは船木誠勝や鈴木みのる、近藤有己、北岡悟らが担ってきた舞台なのだ。そこに女子選手として初めて自分が上がることの喜びと重圧を感じながらWINDYは闘い、そして敗れたのである。
パンクラス初の女子によるメインイベントは判定決着であり、決して分かりやすい攻防ばかりではなかった。誰もが満足したとは言い切れないだろう。だが、メインの重みがどれほどのものであるかをあらためて感じることができたのは、女子の試合、それもWINDYとV.Vの二人が闘ったからだ。そのことだけでも、このマッチメイクには価値があった。