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投高打低の通説覆した第83回大会。
センバツで見つけた注目の逸材!!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/04/07 10:30
東海大相模の1番ライト・渡辺勝は俊足好打が光った。コンパクトなスイングから広角に打球を飛ばし、今大会では打率が4割を越え、長打率は実に7割を越えた
センバツ大会は好投手を擁するチームが強いという通説があり、それを裏付けるように過去3年の優勝チームは、'08年沖縄尚学(東浜巨/沖縄)、'09年清峰(今村猛/長崎)、'10年興南(島袋洋奨/沖縄)と、“絶対エース”の力投が光った。今年の優勝チーム、東海大相模(神奈川)にもエース・近藤正崇がいて防御率1.11と立派な成績を残しているが、フル回転したのは5試合中2試合だけ。近藤、庄司拓哉、長田竜斗の3人が力を結集してマウンドを死守したと言ったほうがいい。
準優勝の九州国際大付(福岡)には1人でマウンドに立ち続けた三好匠がいた。1、2回戦は2点以内に抑える力投でエースの名に恥じないピッチングを見せたが、準々決勝から決勝までの3試合は防御率4点台と打ち込まれた。
“おとなの野球”が魅力の東海大相模。
絶対的な強さがない投手陣を補ったのは両校とも攻撃陣だった。
ひとくくりに“攻撃陣”と書いたが、持ち味は異なる。九州国際大付は1回戦の前橋育英戦で1イニング3本塁打を含む4本塁打、準々決勝の北海戦、準決勝の日大三戦でも1本ずつ本塁打を放っているように、一発長打が魅力のチーム。
東海大相模の魅力は一言で言うと、“おとなの野球”。
見応えがあったのが2回戦の大垣日大(岐阜)戦で、俊足の1番渡辺勝が先頭打者で出塁したケースが2回あり、いずれも大きなリードを取ってバッテリーを揺さぶり続ける。2番臼田哲也もバントの構えで揺さぶり続けるが簡単にバントをしない。2打席とも粘った末に左前にヒットを放って、4番佐藤大貢の2点タイムリーにつなげているのだ。追い込まれても進塁打を打つ自信がなければバントの構えで揺さぶり続けることなどできない。相手の嫌がることを熟知するこの1、2番は凄いと思った。
九州国際大付は「右投げ左打ち」に頼らない長打力が強み。
九州国際大付は、日本球界が最も育成に苦労するスラッガーを3人揃えた点に注目する。4番高城俊人、5番龍幸之介、6番花田駿である。注目したいのが右投げ右打ちの高城と、左投げ左打ちの花田。高校生の主流「右投げ左打ち」は、日常的によく使う右手を引き手にしてバットコントロールできる利点はあるが、あまり使わない左手を利き手にするのでボールを押し込むことが難しい。
しかし、右投げ右打ちの高城と左投げ左打ちの花田は、日常的に使っているほうの手を利き手にしているのでボールを押し込むことができる。日本球界が突きつけられている課題に、九州国際大付ははっきり答えを出していた。