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投高打低の通説覆した第83回大会。
センバツで見つけた注目の逸材!! 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/04/07 10:30

投高打低の通説覆した第83回大会。センバツで見つけた注目の逸材!!<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

東海大相模の1番ライト・渡辺勝は俊足好打が光った。コンパクトなスイングから広角に打球を飛ばし、今大会では打率が4割を越え、長打率は実に7割を越えた

バッティングで光る場面を見せた注目の外野手とは?

 東海大相模、九州国際大付以外では、北川倫太郎(明徳義塾)、畔上翔(日大三)の外野手が光った。北川は昨年秋の明治神宮大会ではタイミングの取り方に迷いがあり、夏の甲子園で見せた輝きを失っていた。しかし、今大会はすべてのボールを自分のタイミングで待てるようになり、1回戦では超高校級右腕・吉永健太朗(日大三)からタイムリー二塁打を放つなど、内容で圧倒していた。

「高校通算5本程度しかホームランを打っていないのが不安」とスカウトから聞かされびっくりしたが、ラインドライブがかかるアッパースイングでもないし、ホームランの少なさは“七不思議”と言ってもいい。

 畔上も昨年秋は精彩がなく、評価を落としていたが、この大会は緩急に対応できるボールの待ち方や、それを可能にしたスイングスピードの速さなど、どこから見てもスキのない打者に成長していた。

冬を越えて急成長を遂げた好投手たち。

 投手にも目を向けると、釜田佳直(金沢)が昨年秋から激変していた。

 北信越大会、明治神宮大会で見た釜田は速いことは速いが、それが打者の脅威にならない不思議な投手だった。たとえば、敗れた東北戦では145キロ、149キロのストレートをいとも簡単に打ち返され、観戦していた智弁和歌山の高嶋仁監督などは「速いけど打ちやすそうな球」と、新聞記者に話していたほどだ。

 しかし、1回戦の加古川北戦では、スリークォーターだったフォームが上手投げに変わり、それまで苦労していた右打者の内角に腕を振ってストレートを投げられるようになっていた。5回2死まで完全ペースの快投で、その時点で奪った三振は9個。昨年の北信越大会、敦賀気比戦では145キロ以上のストレートを連発しながら、奪った三振はわずか3個だけだったにもかかわらず……。わずか半年足らずでこれほどの変身ぶりを見せる選手は非常に珍しい。

 吉永健太朗(日大三)も変わった。

 昨年秋は上体主導のピッチングだったのが、今大会はステップ幅が約1足分広くなったことで下半身を使えるようになり、球のバラツキが少なくなった。走者がいないときはボールの速さより低めにコントロールすることを念頭に置き、走者が得点圏にいるときはエンジンを全開にして140キロ台後半のストレートで打者を圧倒する。こういう緩急の使いどころを心得たピッチングは、一昨年の優勝投手、今村猛(清峰→広島)を彷彿とさせる。

 出場校にも焦点を当てると、今大会は公立校の躍進も目立った。とくに徳島県下随一の進学校・城南はかつての池田(徳島)や昨年の興南(沖縄)を連想させるような力強いバッティングで優勝候補の一角である報徳学園を一蹴し、驚かせた。「公立校」「進学校」あるいは「文武両道」という狭苦しい囲いの中で野球をしていないのが何よりいい。やりようによってはこういうチームも作れるのだと教えてくれた。

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