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F1開幕戦を控えた最終テストにて。
バルセロナで火花散らせる情報戦!
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/03/25 10:30
開発が思うように進まず、開幕直前になってもまったく評価を得ていなかったマクラーレンの最新マシンMP4-26。マクラーレンらしく、シーズン途中からでも大幅バージョンアップして速くなるのかどうか?
奇妙なタイヤ交換でライバルの目を欺いたフェラーリ。
セッション後にアロンソのレースエンジニアであるアンドレア・ステラがご機嫌そうにしていたので、「タイヤはソフト→ハード→ハード→ソフト→ソフトだったの?」と尋ねてみると、ステラはニヤリと笑って、Vの字に立てた2本の指をクルクルと回すのである。
つまり、1回ごとにタイヤの種類を変えたというのだ。このようなタイヤ交換は通常のレースでは行わない。
おそらくレースシミュレーションを行いながら、2種類のタイヤのデータをしっかりと取っておきたかったのだろう。さらに、できればライバルに対して、本当の実力は隠しておきたかったのかもしれない。アロンソの前日にシミュレーションを終えていたマッサのレースエンジニアであるロブ・スメドリーも「いいデータが取れた。早くメルボルンでレースがしたい」と笑顔だった。
マクラーレンがテスト走行を1日休んだ理由とは?
ウインターテストではレッドブルとフェラーリの二強に押されっぱなしだったマクラーレンも、バルセロナでは不気味な行動を取っていた。5日間の日程で行われたこの最後の合同テスト。しかし、チームが走行できる日数はそのうち4日間だけと制限されていた。その結果、前半4日間組と後半4日間組のいずれかに分かれた。
ところが、3月8日の初日にスタートしたマクラーレンのテストが終了したのは最終日の3月12日。マクラーレンは3日目の3月10日を休日に充てたのである。
正確にいうと、「休日」ではなく「テスト走行はしなかった」となるのだが。なぜなら、彼らは休日である3月10日もサーキットに来て、ピットガレージで作業を行っていたからだ。つまり、彼らは合法的にテストを5日間行っていたこととなる。
さらに、その5日間につぎ込むマンパワーも他チームを上回っていた。
シーズン中のテストが制限されてから、ウインターテストでトップチームがスタッフを2交代制で働かせているのは周知の事実である。朝番のメカニックがテスト走行を担当し、セッションが終了した夕方に夜番と交代。夜番のメカニックが翌日のテストに向けたマシンのセットアップを深夜に行うという段取りだ。
それがマクラーレンは3交代制のシフトを組んでいるのである。
なぜか。
それは新車MP4-26の発表が遅れ、さらにそのMP4-26に信頼性の問題が発生したため、なかなかテストプログラムが進まず、ポテンシャルを発揮できないままでいるからだ。
「今年のマクラーレンは、もう終わった」とささやかれたりもしているが、バルセロナで見る限り、彼らはあきらめていないだけでなく、真剣に勝ちに行っている。