詳説日本野球研究BACK NUMBER
今季のキーワードは“下克上”!?
ヤクルトとオリックス、大躍進の予感。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/22 10:30
ヤクルトの本格派左腕・村中恭兵は昨シーズン11勝を挙げ、奪三振数もリーグ2位と飛躍の年となった。今シーズンはチェンジアップを習得することで投球の幅を広げ、課題の制球力も向上させたい
パ・リーグはオリックスの戦力充実ぶりに注目。
エース・金子千尋が右ヒジの手術で出遅れが必至。普通に考えれば昨季5位のオリックスに成績上昇は望めないが、投手陣は悪くない、と言うより充実している。
メジャーで124勝(アジア人投手としては歴代最多)を挙げている朴賛浩は開幕投手のナンバーワン候補で、キャンプからの投球を見てもその実力の片鱗がうかがえる。走者を置いたときのセットポジション投球に迷いを見せているが、来日した外国人投手なら誰でも一度は通る道。主戦クラスの成績を期待してもいいと思う。
横浜から移籍した寺原隼人は昨季、先発した7試合の5回までの防御率が2.41と安定している(シーズンでは防御率3.67)。この成績が重要なのは、オリックスのリリーフ陣がリーグ屈指の安定感を誇っているからに他ならない。
抑えの岸田護と、そこにつなぐ役割の平野佳寿の実力は、他球団なら先発ローテーションの中心に入れるほど高い。さらにロッテ、巨人で228セーブを挙げた小林雅英、先発とリリーフの狭間にいる中山慎也、小松聖、西勇輝のうち1人がセットアッパーに加われば、ソフトバンクに並ぶリリーフ陣と言っても過言ではない。5回まで先発が投げ、6回以降リリーフ陣が1人ずつ刻んでも、岸田につなげる質と量は他球団の脅威になることは間違いない。
ヘスマンと李は未知数だが、T-岡田と後藤の打棒は保証つき。
打線は新外国人・ヘスマンと巨人から移籍したイ・スンヨプが爆発しないとカブレラ(ソフトバンクへ移籍)の抜けた穴を埋められないが、昨年の本塁打王・T-岡田と、FA権を行使したのちの残留に踏み切った後藤光尊が充実期に入り、ヘスマン、イ・スンヨプの爆発をあてにしなくてもそれなりの打線を組める陣容である。
イ・スンヨプに関しては巨人時代の過去3年間、出場機会が制限されていることもあり打席に入る渇望感が他の選手より強い。阪神時代に同じ境遇にあって、昨年、移籍1年目で活躍したバルディリスの例もあるので、イ・スンヨプの爆発はけっして夢物語ではない。
岡田彰布監督に注目すれば、優勝経験のある監督が移籍した他球団で優勝する確率は15例中10人。その確率は何と6割6分7厘と高い。3チーム目になると途端に優勝できなくなるのは選手同様、ハングリー精神が失われるからだろう(3球団で優勝経験があるのは三原脩、西本幸雄の2人しかいない)。しかし、2球団での優勝はハングリー精神が色濃く残っているので、その確率はグンと上がる。
岡田監督は'05年の優勝以来、美酒を味わっておらず、当然ハングリー精神は旺盛である。師と仰ぐ仰木彬・元オリックス監督と同じ道を歩めるのか、興味は尽きない。