詳説日本野球研究BACK NUMBER
今季のキーワードは“下克上”!?
ヤクルトとオリックス、大躍進の予感。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/22 10:30
ヤクルトの本格派左腕・村中恭兵は昨シーズン11勝を挙げ、奪三振数もリーグ2位と飛躍の年となった。今シーズンはチェンジアップを習得することで投球の幅を広げ、課題の制球力も向上させたい
ヤクルトがセ・リーグの台風の目になる。
中日、阪神、巨人の3強が定着した感のあるセ・リーグだが、過去5年間、3位に2度入っているのがヤクルトだ。戦力が万全でないにもかかわらず、'06年は得点669(リーグ1位タイ)、失点642(4位)、'09年は得点548(3位タイ)、失点606(5位)と打撃優位のチームを編成してAクラスに入っている。だが、今年はずばり「投手優位」のチームになったと言っていいだろう。
この球団を際立たせているのは若手投手陣の充実である。彼らの昨年の成績は次の通り。
村中恭兵(24歳)……11勝10敗、防御率3.44(リーグ6位)
由規(22歳)…………12勝9敗、防御率3.60(9位)
増渕竜義(23歳)…… 2勝3敗、防御率2.69
中澤雅人(26歳)…… 7勝9敗、防御率5.68
とくに注目したいのが、ストレートの最速が150キロ以上を計測する村中、由規、増渕の力強いピッチングで、3人とも上位球団に強いという長所がある。
◇村中恭兵
中日戦……4勝1敗、防御率1.65、奪三振率8.82
巨人戦……3勝1敗、防御率3.31、奪三振率10.84
◇由規
中日戦……2勝0敗、防御率2.18、奪三振率8.27
巨人戦……2勝3敗、防御率3.96、奪三振率8.18
◇増渕竜義
中日戦……1勝0敗、防御率2.45、奪三振率3.68
巨人戦……0勝1敗、防御率0.00、奪三振率9.52
増渕はイニング数の少ないリリーフ登板なので村中、由規とは同一にくらべられないが、横手から上手に腕の振りを変え、ピッチングに安定感が出てきたことが大きい。
3人の課題は阪神戦の乱調ぶりに尽きる。
村中=0勝3敗、防御率5.40、由規=1勝2敗、防御率5.60、増渕=0勝1敗、防御率4.38と、総崩れと言ってもいい惨状である。
阪神に強い、館山昌平(3勝0敗、防御率1.19)、石川雅規(2勝1敗、防御率2.77)のピッチングの最大の特徴は左右対になる変化球(シンカー・シュートとスライダー)があること。2人に倣い左右の揺さぶりに活路を見出し苦手を克服できれば、上位進出どころか優勝争いに加わることも夢ではない。