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レース観戦の視点が劇的に変化した!?
ピレリの採用でF1は未知の世界へ。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2011/03/17 10:30

レース観戦の視点が劇的に変化した!?ピレリの採用でF1は未知の世界へ。<Number Web> photograph by AFLO

合同テストでのレッドブルのピットクルー。タイヤを巡る戦術変化は過去にもたびたびあったが、今回ほど劇的にレースを変えたものは無かったかもしれない……

 開幕戦となるはずだったバーレーンGPの中止が発表される直前のスペイン・バルセロナ(カタロニア・サーキット)で行われていた合同テストで、F1関係者に衝撃的な出来事が起きていた。それは昨年のチャンピオンチームであるレッドブルが遂行していた「レースシミュレーション」の内容だった。

 4回予定されていたウインターテストの中で、3回目となった2月下旬の合同テストとなったこのバルセロナでは、依然として多くのチームが信頼性の確保やマシンの基本的なセットアップに多くの時間を費やしていた。そんな中、ウインターテストの走り始めから順調にマイレージを重ね、しかもラップタイムも安定した速さを披露していたレッドブルは他チームに先駆けて「レースシミュレーション」をテストプログラムに入れてきたのである。

「レースシミュレーション」とは、文字通り実際のレースを想定した実戦さながらのテスト走行のことである。

 他チームはまったく違うプログラムで混走しているため、スターティンググリッドからスタートは切れないものの、それ以外はまったくレースと同様の条件で行うのが慣例で、レースと同じ周回数を最短時間で走るプログラムである。当然のことながら、レースを想定したピットストップも行われ、その作業を行うメカニックもレースチーム部隊の精鋭たちが担当する。ステアリングを握ったのは昨年のスペインGP覇者であるマーク・ウェバーだった。

安定感に欠ける新タイヤが3回ものピットストップを強いた!

 ライバルチームが注目する中、タイヤ交換のために1回目のピットストップを行ったウェバー。約9カ月前のスペインGPを制したとき、ウェバーのピットストップ回数は1回だった。しかし、2月下旬に行ったレースシミュレーションでは、ウェバーのピットストップは1回では収まらなかった。

 ピットアウトしたウェバーは20周も経たないうちに再びピットイン。しかし、それも最後とはならず、66周を走りきるまでに、ウェバーはもう一度ピットインを余儀なくされた。

 結局、この日ウェバーは合計3回のピットストップの末にレースシミュレーションを完結。

 それは今シーズンも最速であろうレッドブルのマシンですら、レースディスタンスを走りきるにはマルチピットストップが不可欠である事実を突きつけた瞬間だった。

【次ページ】 サーキットによってはピットストップ3回で済まない?

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