F1ピットストップBACK NUMBER
レース観戦の視点が劇的に変化した!?
ピレリの採用でF1は未知の世界へ。
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2011/03/17 10:30

合同テストでのレッドブルのピットクルー。タイヤを巡る戦術変化は過去にもたびたびあったが、今回ほど劇的にレースを変えたものは無かったかもしれない……
サーキットによってはピットストップ3回で済まない?
確かにブリヂストンからピレリにタイヤが変更されてから、ピレリのタイヤに安定感が欠けることは多くのドライバーが指摘していた(ピレリのスタッフは意図的にそのようなタイヤを開発したと説明しているが……)。しかし、いざそれが現実のものとなると、やはり衝撃は少なくなかった。
もちろんカタロニア・サーキットはタイヤへの負担が大きいサーキットであることも考慮しなければならない。
しかし、レースシミュレーションに使用されていたタイヤは硬めのスペックがチョイスされていたものと考えられ(実際にどのスペックが使用されていたのかは不明)、タイヤへの負担が大きくないほかのサーキットでは軟らかめのコンパウンド(ゴム)のタイヤが使用されるはず。そうなれば、結果はカタロニア・サーキットとそれほど遠くはないだろう。ましてや、カタロニア・サーキットよりもタイヤへの負担が大きいシルバーストーン(イギリスGP)、鈴鹿(日本GP)では3回では済まない可能性すらある。
この結果に衝撃を受けているのは、それが単に今年のF1のピットストップ回数が増えることだけを意味しているのではないからだ。
燃料よりもタイヤを優先……戦略を根幹から見直す必要が。
ピットストップの回数が増えることだけなら、レース全体がエキサイティングになるので悪い話ではないかもしれない。
しかし、今回のウェバーのレースシミュレーションでは燃料が軽くなっていっても、それを上回るスピードでタイヤのパフォーマンスがダウンしていくことが判明したのだ。
それはブリヂストンがF1に参戦していた時代に確立されたタイヤをいかに安定して使用して、ピットストップを遅らせるかというF1の根幹となる戦略を見直さなければならない時期が訪れたことを意味している。
これまでのF1は、給油が可能だった時代も、給油が禁止された昨年も、相手よりもできるだけピットストップのタイミングを引っ張って、相手に先んじるというのが基本的な戦い方だった。しかし、これはある程度、タイヤが安定して性能を出すことを前提とした戦略なのだ。
もちろん、ブリヂストンのタイヤでも走行距離が延びれば、性能は劣化する。しかしこれまでは、走行距離が延びれば同時に燃料も消費され、燃料感度が大きいF1では(10kgの違いで約0.3秒ラップタイムが違う)、タイヤの性能劣化よりも燃料消費による車重の軽量化でラップタイムが向上するケースのほうが多かったのだ。