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王者・名古屋グランパスの首を狙う
強豪6チームが選んだ2種類の方法論。
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byAtsushi Hashimoto/Kenzaburo Matsuoka(AFLO)
posted2011/03/04 10:31
王座奪還を目指す鹿島・オリヴェイラ監督(左)と、現役最後の2年間を過ごした古巣へ復帰した川崎・相馬直樹監督
昨季、名古屋が2位につけた勝点差10は、2005年にJ1が18チーム&1ステージ制となって以降の最大の勝点差。独走でリーグ初制覇を成し遂げた王者の首を、これまで優勝争いの主役を演じ続けてきた強豪たちが狙う。それが、いよいよ開幕を迎える'11年のJリーグの背骨となるストーリーだ。
4年目を迎えたストイコビッチ監督のもと、王者として挑戦者を迎え撃つ名古屋は、スタメン級の選手の入れ替えを最小限にとどめ(マギヌンを放出し、清水から藤本淳吾を獲得)、連係の完成度を高めて上積みを図る道を選んだ。しかし、ボランチのダニルソンがケガで長期離脱を余儀なくされ、かつACL(アジアチャンピオンズリーグ)との2冠を狙う立場になったことを考えると、昨季の力を維持することも決して簡単なことではない。
昨季の独走は、中位以下のチームから確実に勝点3を奪っていくという、個の能力をベースにした勝負強さがもたらしたもの。鹿島と川崎には2戦2敗だったように(G大阪には2勝したが)、ライバルたちとの間に絶対的な能力の差はなかった。そう考えるとやはり、ケネディや玉田圭司といった強力な個を融合させる連係のさらなる向上は、連覇のための最低条件だと言える。
そして、その王者の首を狙う挑戦者たちは、選んだ方針の違いからきっちりと2つのグループに別れた。
鹿島は、3連覇時代を遥かに超える攻めの補強に。
第1グループは、勝点では引き離されたが敗戦数では名古屋と同じか少なかった、ACL参戦組のG大阪、C大阪、鹿島。彼らは、10年目の西野朗、5年目のレヴィー・クルピ、オズワルド・オリヴェイラという長期政権を継続させ、主に前線の選手の入れ替えでチーム力の引き上げを狙ってきた。
ルーカス、チョ・ジェジンを放出したG大阪は、昨季C大阪で14ゴールを挙げたアドリアーノと、マルチロールのキム・スンヨンを獲得。遠藤保仁を軸とする中盤にはFWの良さをいち早く引き出す力があるだけに(橋本英郎、明神智和のケガは痛いが)、スピードとパワーを兼備したアドリアーノが早い段階でフィットすれば、スタートダッシュもあり得る。
3連覇の立役者ながら34歳となったマルキーニョスを仙台へと放出した鹿島は、ポルトガルリーグで活躍していた長身FWカルロンを獲得し、山形から田代有三をレンタルバック。中盤以下のポジションでも、清水から本田拓也、山形からレンタルバックで増田誓志、千葉からアレックス、新潟から西大伍と、3連覇時代のそれを遥かに超える攻めの補強に出た。
司令塔・家長の離脱でセレッソは中盤の再構築がカギ。
一方、状況が多少異なっているのがC大阪だ。J2でずば抜けた能力を披露したキム・ボギョンを大分からレンタルバックで復帰させ、ブラジル人FWのホドリゴ・ピンパォンを獲得したが、マイナスもかなり大きい。前述のアドリアーノはもちろんだが、ゲームメイクで破格の力を見せていた家長昭博の離脱(→マジョルカ/スペイン)は相当な痛手だろう。一概には言えないが、周りを“使う立場”の司令塔の入れ替えは、主に“使われる立場”のFWの入れ替え以上にコンビネーションの再構築を必要とする。G大阪や鹿島のような中盤の構成を維持したうえでの補強とは質が異なるはずだ。
一方、名古屋から勝点で大きく引き離された第2グループは、選手補強に加えて、よりドラスティックな監督交代策に出た。川崎、清水、浦和だ。