Jリーグ観察記BACK NUMBER
香川、長友、岡崎に続く逸材は……。
Jに眠る“未知なる怪物”を発掘せよ!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/10 10:30
試合終了間際に、名古屋のFW永井謙佑は横浜FMのDF栗原勇蔵に倒されPKを得る。ケネディが決め、試合は1-1の引き分けに
ここ1年間で日本サッカー界は、次のことを学んだのではないだろうか。
育成の正解はひとつではない――。
かつてはアンダー年代の代表に選ばれることが育成のメインストリームだと思われていたが、大学2年生までほぼ無名だった長友佑都がインテルに引き抜かれ、中学生時代までトレセンに一度(しかも兵庫県選抜レベル)しか入ったことがない岡崎慎司がシュツットガルトに旅立った。ドルトムントの香川真司はU-15から代表に選ばれているエリートだが、3年間もJ2でプレーしており、順調にステップアップしたわけではない。
まわり道をしたり、ときには道がないところを突き進んだりして、いろんなルートを辿って日本代表に入る若手がでてきた。
今季のJリーグにも、そういう雑草魂を持った“新たな怪物”候補が何人もいる。
鮮烈デビューを飾った永井謙佑は“大学デビュー”の遅咲き。
早くもプロデビュー戦で結果を残したのが、福岡大学から名古屋グランパスに加入した永井謙佑(22歳)だ。横浜F・マリノスとの開幕戦では後半21分から出場すると、圧倒的なスピードで相手DFのファールを誘いPKをゲットした。まずはスーパーサブとして、王者名古屋の大きな武器になるだろう。
永井は遅咲きの選手だ。高校時代は代表とは縁がなく、U-18代表に初めて招集されたのが大学1年生のとき。同部屋になったのは、すでにセレッソ大阪でプロデビューしていた香川だった。九州から出てきた大学生にとって、これからA代表にステップアップしようというエリートはあまりにもまぶしかった。永井は大学とU-18代表を行き来するうちに、同年代のプロ選手とのレベルの差を感じ、スランプに陥ってしまった。
それを救ったのが、福岡大学の乾真寛監督だ。
乾監督は永井にこう声をかけた。
「まっすぐ伸びていくヤツなんて、どの世界にもいないよ。ここで一度体を作り直そう。オマエより速く走れる選手は、日本代表にもいない。誰に替わりができるんだ? 体作りに取り組めば、絶対に道は開ける」
永井は特別メニューに取り組んだことで、さらにスピードを生かせるようになり、U-19アジア選手権で得点王に。大学選抜でもエースになり、2010年1月のイエメン遠征で日本代表に初招集された。
3歳から8歳までブラジルで暮らした経験があり、乾監督いわく「性格はラテンそのもの」。スペースがないときにボールをどう受けるかに課題はあるが、間違いなくスピードは日本一だ。ロンドン五輪を目指すU-23代表のエースとしても期待されている。