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王者・名古屋グランパスの首を狙う
強豪6チームが選んだ2種類の方法論。
text by
猪狩真一Shinichi Igari
photograph byAtsushi Hashimoto/Kenzaburo Matsuoka(AFLO)
posted2011/03/04 10:31
王座奪還を目指す鹿島・オリヴェイラ監督(左)と、現役最後の2年間を過ごした古巣へ復帰した川崎・相馬直樹監督
清水は「まっさらな状態からのスタート」に。
そのうち清水は、ヒディンクのもとで韓国代表コーチを務めた経験を持つイラン系アメリカ人のアフシン・ゴトビを新監督に招聘。加えて、岡崎慎司を筆頭に半数以上のスタメンを放出し、高原直泰や小林大悟、オーストラリア代表経験を持つFWアレックスらを獲得した。つまり、大枠のコンセプトだけではなく、選手間の小さな局面での共通理解もまっさらな状態からのスタート。台風の目となり得る可能性は感じるが、現実的には、来季以降の戴冠に向けてのベース作りがテーマになるだろう。
一方、川崎と浦和は、新戦力を加えつつ従来の主力も維持した点が清水とは異なる。新監督はともに現役時代に主力としてプレーしたクラブOB。川崎は昨季JFLの町田ゼルビアで指揮を執った相馬直樹、浦和はオランダ2部リーグでの監督経験などを持つゼリコ・ペトロビッチだ。
当然、2人の新監督は自分なりのコンセプトをチームに植えつけていくことになるが、注目すべきポイントのひとつは、既存の選手たちが共有している前政権の遺産を利用できるかどうかではないかと思う。
川崎、浦和の監督交代に感じる躍進の可能性。
浦和で言えば、クラブOBで監督1年目のブッフバルトが率いた'04年のチームは、前任のハンス・オフトが植えつけた守備のバランス感覚をある程度引き継ぎながら、初のステージ優勝を成し遂げた。また、川崎も同じ'04年に、監督1年目の関塚隆の指揮のもと圧倒的な成績でJ1昇格を果たしたが、そこでも前任の石崎信弘が築いたベースは息づいていた。
今季の川崎、浦和の監督交代には、前任者の仕事ぶりや新任監督の経歴などの点で、当時と多くの共通点がある。それゆえに、残す要素を取捨選択したうえでの積み上げに躍進の可能性を感じるのだ。
名前を挙げたチーム以外でも、ムジリ、トミッチという新外国籍選手を加えた広島、大黒将志や谷口博之を加えた横浜FMも、上位を脅かすポテンシャルを持った存在。また、東慶悟や上田康太を加えた大宮、マルキーニョスや柳沢敦、チョ・ビョングクを加えた仙台、J2を圧倒的な強さで制した堅守の柏などがどこまでレベルを上げてくるかにも注目が集まる。
果たして今季、下馬評を超えるパフォーマンスでファン・サポーターを沸かせるチームはどこになるのだろうか。