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なぜラリーで事故を起こしたのか?
クビサの惨事でF1界の問題が露呈。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2011/02/09 10:30
1月31日にはロータス・ルノーの新型車R31のお披露目パーティに出席したばかりだったロバート・クビサ。次代のF1王者としても期待されていたのだが……
ハイテク化でドライバーの差が無くなってきたF1界。
現在のF1はマシンが高性能になったため、その優劣によって結果が大きく左右され、ドライバーの力量の差が出にくい時代となった。
フル参戦2年目の2008年に初優勝したクビサは、2009年に飛躍するかと思われたが、当時在籍していたBMWザウバーのマシンが失敗作だったため、1年間辛酸をなめ続けることになった。結局、翌年にルノーへ移籍することとなった事情を鑑みてもクビサの気持ちは明らかだろう。
クビサがF1以外のレースに出場するようになったのもこの頃。
ドライバーとして、クビサにとってF1という世界は、純粋にレースを楽しむ場所ではなくなっていたのかもしれない。
2月3日にトップタイムをマークしたものの、午前中はトラブルで走ることができなかったクビサ。さらに今年のF1マシンはKERS(運動エネルギー回生システム)が復活し、リアウイングが可動式になるなど、いままでにも増してハイテク系のデバイスが増えており、ドライバーというよりはオペレーター的な役割が増していた。
もはやF1はドライバーにとって“楽しい”レースではない?
そんな中、午後にクビサが記録したトップタイムもレース予選を想定したギリギリのアタックだった。ロングランではレッドブル、フェラーリらトップチームに歯が立たず、テスト後の会見では、トップタイムをマークしたにもかかわらずクビサに笑顔はなかったという。
もし、F1がモータースポーツの最高峰と呼ばれるように、ドライバーにとっても最高に楽しい舞台であるなら……契約で縛らなくともF1ドライバーたちは他のレースに出場することなどないかもしれない。
F1に携わっている者たちは今回のクビサの事故を契機に、F1のあるべき姿を今一度、考え直してみてもいいのではないか。そしてF1が、ドライバーにとって真に最高の舞台となったとき、再びその場にクビサが戻ってきてくれることを切に願う。