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「クビになった日に決めたんです」ウナギ・サヤカはなぜスターダム退団後に“埋もれなかった”のか? 両国国技館大会で目指す“幸せにするプロレス”
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/04/26 11:04

4月26日に両国国技館で自主興行を開催するウナギ・サヤカ
両国大会開催を発表すると、選手側からの反響も大きかったという。
「両国でやるなんて凄いね、何かあったら力貸すからねって、先輩レスラーが自分から言いにきてくれるんですよ。今はそうやってみんなで盛り上げる時代。闘う相手でもあるんだけど、私は関わってくれたみんなを幸せにしたい。それが私の“勝ち方”です」
両国大会のメインイベントでは、米メジャー団体WWF(現WWE)で活躍した白使へのオファーに成功。考えうる限りいま最もレアな選手だから闘いたかったという。試合はタッグマッチで、ウナギはパートナーに彩羽匠を指名した。彩羽は長与千種の愛弟子だ。このチームアップは「クラッシュ・ギャルズを超えるため、長与千種を倒すため」のものだとウナギ。
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事前に予選を行った賞金トーナメントの決勝では葛西純vs.スーパー・ササダンゴ・マシンという異色カードが実現。かと思えば古巣スターダムに乗り込んで安納サオリに公開オファーも。それも「健康サンダルマッチ」、つまり足ツボを刺激されながらの試合で、対戦相手チームにはONE Championshipで勝ったばかりの青木真也もいる。健康サンダルをはいた安納と青木が両国国技館で闘うというのはどういうことなのか……。
「誰かが不幸になるプロレスはしたくない」
ウナギのバイタリティは止まるところを知らず、文化放送でラジオ番組をスタート。すると文化放送内のイベントホールで『文化放送プロレス』を実現させる。野望は全番組乗っ取りと、局の看板パーソナリティである大竹まことをリングに上げること。そう語るウナギを見ながら、筆者の横で広報担当が苦笑していた。小橋建太プロデュース興行への出場も恒例となった。
内藤哲也が新日本プロレスを退団したと聞けば「ギャン期に入ったか。ギャン期の先輩としてアドバイスしてあげてもいいよ」。東京ドーム前広場でRIZINが記者会見を行うと「ここで興行やりたい」と言い出す。そんなアンテナの張り方をしているレスラー、ウナギくらいのものだろう。実はドーム興行実現に向けて株式会社東京ドームとも話し合いを進め、アルバイトスタッフとして東京ドームシティのイベントで働いてもいる。そうして着々と人脈を広げているわけだ。
「プロレスラーもプロレスファンも、プロレス界全部を幸せにする」
常にウナギはそう言ってきた。決意をさらに強くさせる出来事もあった。4月27日、両国大会の翌日に開催されるスターダムの横浜アリーナ大会で、上谷沙弥vs.中野たむの「敗者引退マッチ」が組まれたのだ。それをウナギは「人が不幸にしかならない試合」だと言う。
「その前日に、私が両国で全員を幸せにしてみせますよ。私は1.7(第1回自主興行)でみんなが幸せな顔で帰っていくのを見ているので。ワンマッチ興行もそう。プロレスは人の生きる力になるもの。幸せに、元気になってもらえるのがプロレスだと思ってるので。誰かが不幸になるプロレスはしたくない。(スターダムを)クビになった日にそう決めたんです」