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「クビになった日に決めたんです」ウナギ・サヤカはなぜスターダム退団後に“埋もれなかった”のか? 両国国技館大会で目指す“幸せにするプロレス” 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2025/04/26 11:04

「クビになった日に決めたんです」ウナギ・サヤカはなぜスターダム退団後に“埋もれなかった”のか? 両国国技館大会で目指す“幸せにするプロレス”<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

4月26日に両国国技館で自主興行を開催するウナギ・サヤカ

ウナギが里村に誓ったこと

 昨年は誕生日である9月2日にも後楽園で自主興行を開催。さらに今年2月16日の後楽園大会は、同会場で女子初のワンマッチ興行となった。対戦相手は4月29日に引退を控えた里村明衣子。引退発表があってすぐ、会場を押さえたという。大会当日はウナギvs.里村1試合のみ。本当にそれ以外は何もなく、それで観客を満足させた。観衆は第1回の自主興行を超える1603人。入場用ステージも取っ払って客席にするほどチケットが売れた。

「今回、ワンマッチをやると決めたら業界の人たちから“私たちがやろうと思っていたのに”と言われました。思ってたけどやらないのがオマエら。やるのが私、ウナギ・サヤカです」

 本当にその通りで、他の選手とは行動力が違いすぎた。

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「なんでもできる、なんにでもなれる」

 そう信じて実際に動くことができるのだ。ウナギは試合に敗れた後、里村にこう語りかけてもいる。

「たくさんの人が“昔のプロレスはよかった”って言う。確かにそうです。でも今、リングの上で生きてプロレスをしてるのは現役のレスラーなんですよ。だから絶対に、何があっても、大きい夢を見て、大口叩いて、先頭で行動して、夢を叶え続けるとお前に誓うよ。“今が一番凄いプロレス”を、これからも一緒に作らせてください」

 Netflixのシリーズ『極悪女王』をきっかけにレジェンドたちが注目を浴びる中、ウナギは最前線で闘う若い選手たちの価値を訴えたのだ。『極悪女王』の感想を取材した時には、こんなことを言っている。

「フィクションだったら感情移入してたかもしれないけど、現実にいる人たちの話じゃないですか。現実のレスラーは私にとっては敵なので。『極悪女王』を見て、あの人たちが凄いことをやってきたのは分かった。私がやるべきなのは尊敬することじゃない。歴史を超えること。『あの時代は凄かった』じゃ終われないでしょう」

両国大会開催に、選手たちの反応は…

 最初の自主興行を成功させた時、頭に浮かんだのが東京ドーム進出だった。これまで女子でドーム興行を開催したのは全日本女子プロレスのみ。選手個人の自主興行は前代未聞で、だからこそやりたかった。4月26日の両国国技館大会も、ドームに向かう過程にある。「東京ドームをパンパンにすること」は、歴史を作ってきた選手たちに勝つ手段でもある。

「自主興行でドームは誰もやってない。さすがにみんな『負けた!』ってなるでしょ」

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#ウナギ・サヤカ

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