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「クビになった日に決めたんです」ウナギ・サヤカはなぜスターダム退団後に“埋もれなかった”のか? 両国国技館大会で目指す“幸せにするプロレス”
posted2025/04/26 11:04

4月26日に両国国技館で自主興行を開催するウナギ・サヤカ
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
とうとうここまできた。4月26日、フリーレスラーのウナギ・サヤカが両国国技館で自主興行を開催する。
両国国技館といえば、プロレスで使用される中でも屈指の大会場。団体成功のバロメーターの一つと言ってもいい。そんな場所でフリー選手が自主興行。それ自体が快挙だ。こんな展開、誰も予想していなかった。
女子プロレス界に“埋もれなかった”ウナギ
ウナギは2019年に東京女子プロレスからデビュー。アイドルなど芸能活動の経験があり、またアーティスティックスイミング、チアリーディングで全国レベルの成績を残している。運動能力は高かったはずだが、決して目立つ選手ではなかった。
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「最初は(芸能の)踏み台くらいに思っていた」というプロレスだったがどんどんのめり込む。2020年、飛躍を期して業界最大の団体スターダムへ。中野たむ、白川未奈と結成したユニット「コズミック・エンジェルズ」で6人タッグ王座を獲得した。
ところが、2022年10月にシングルリーグ戦を2勝10敗の不本意な戦績で終えると、直後から“ギャン期”と称して団体外での活動に。JTO、ディアナ、マーベラス、センダイガールズなどさまざまなリングに乗り込んでいった。“ギャン期”とはつまりフリー。どんなリングにも強気で上がり、大ベテランにも物怖じしない。そのバイタリティが何よりの魅力だった。のちに明らかにしたのは、スターダムを「クビ」になったということ。そこで自信を失うのではなく、やりたいことをやるようにしたのだ。
女子団体参戦が“一周”すれば勢いも薄れて“女子プロレス界”に埋もれていくのではという危惧もあった。しかしウナギは(変な表現だが)なかなか埋もれない。2023年には大谷晋二郎の推薦で男子団体ZERO1のシングルリーグ戦『火祭り』にも参戦する。結果は全敗だったが、ウナギ自身「胸を張って全敗」と言える真っ向勝負の連続。無鉄砲で、だからこそウナギの闘いは心に響く。その支持者は増える一方だった。
各団体の客席にはウナギのグッズを身につけた「ひつま武士」(ファンの総称)が大挙して陣取り、グッズ売店(サイン会)も毎回、長蛇の列。貯まった数百万円を元手に、ウナギは“聖地”後楽園ホールで自主興行を行う。昨年1月7日のことだ。
初の自主興行が後楽園というのはハードルが高いと思われたが、プロレスファンはウナギの“傾奇者”ぶりを支持した。観衆1230人、超満員札止め。バックステージのケータリングに温かいラーメンを用意するなど細やかな気配りも好評だった。観客だけでなく選手やスタッフにも楽しんで、関わってよかったと思って帰ってほしいのだとウナギは言った。