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「申し訳ない」大谷翔平ドラ1指名後、栗山監督が報道陣を通して真っ先に謝罪…逆風の日本ハムが「メジャー志望」大谷18歳の心をつかんだ理由
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byTakashi Shimizu
posted2025/04/27 17:03

日本ハムからドラフト指名を受けた後日、交渉の場に向かう大谷翔平
日本プロ野球は内規でドラフト指名を拒否して外国球団と契約した高校生は、帰国後3年、日本球団と契約できない、と定めていた。日本ハムが指名すれば、大谷の野球人生も大きく変わることになるのだった。
しかし――。
「うちは毎年、一番力のある選手を指名してきた。その方針はぶれない。メジャー挑戦を阻害するわけではないが、リスクは承知している」
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10月23日、日本ハムの山田正雄GMは大谷の強行指名を明言した。
この年のドラフトの一番の目玉は、春夏連覇を果たした大阪桐蔭高の藤浪晋太郎で、大谷はその次。大学勢では亜細亜大の東浜巨に注目が集まり、菅野を巨人以外の球団が指名するかどうかも注目されていた。
ドラフト指名後、栗山監督は最初に「申し訳ない」と
果たして10月25日のドラフトで、藤浪は阪神、オリックス、ヤクルト、ロッテが指名する中、阪神の和田豊監督が当たりくじを引き当てた。東浜は西武、ソフトバンク、DeNAが指名し、ソフトバンクが引き当てた。菅野は巨人が単独指名した。
そして大谷は、日本ハムが予告通り指名した。
前年、巨人志望を明言していた菅野を日本ハムが強行指名した際には、場内からは大きな拍手が起こった。しかしこの年は、ドラフト会場の拍手はわずかだった。
新聞は「18歳がどれだけの覚悟で態度表明したか(栗山監督は)わかっていたはずだ」と書いた。ドラフト会議を終えた栗山監督が、報道陣に最初に切り出した言葉は「申し訳ない」だった。
花巻東高で報道陣に接した大谷は硬い表情で「びっくりしたし動揺している。評価していただいたことはすごくうれしいし、ありがたいですが、米国でやりたい気持ちは変わりません」、花巻東高の佐々木徹監督は「指名権がある限り、交渉を拒否すべきではない。ただ、監督としては本人の意思を尊重したい」と話した。
入団交渉開始…高校にはクレームの声も
厳しい逆風の中で、日本ハムは大谷との交渉を開始した。
10月26日、日本ハムの山田正雄GMと大渕隆スカウトは花巻東高にあいさつに訪れたが、大谷本人は「練習がある」と同席せず。佐々木監督に約20分間、指名の経緯を説明した。山田GMは「本人に会っていないので手ごたえはわからない」と話した。
この日を含めて日本ハムは6回も花巻東高を訪れた。12月に入ると「大谷翔平、日本ハム入団に前向き」という報道が出始めた。