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じつはドラフト前“ドジャースと面談”大谷翔平、松坂大輔は「礼儀なので話はしますが」“乗り気でない”2人が日本ハム・西武入団を決めるまで
posted2025/04/27 17:02

松坂大輔と大谷翔平。2人はすんなりとドラフト指名からプロ入りしたわけではない
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Hideki Sugiyama/Shigeki Yamamoto
苦笑交じりに「礼儀なので話し合いはしますが」
1998年のドラフト会議、横浜高校の松坂大輔は西武、横浜、日本ハムに1巡目で指名された。第1回で触れた通り、松坂の希望はその年に日本一に輝いたベイスターズだった。しかし交渉権を引き当てたのは、西武だった。
「甘くなかったです、礼儀なので話し合いはしますが、気持ちに変わりはありません」
くじ引きの瞬間に一瞬、苦笑した松坂はこうコメントした。
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一方で、西武の東尾修監督はこのように語っている。
「ゆっくり、プロに対しての気持ちを聞きたい。これも運命というか、僕自身高校からドラフトで入ったし」
同じドラフトでオリックスに指名された沖縄水産高の新垣渚も即座に「意中の球団(ダイエー)以外は大学と決めていた。九州共立大に進学します」と語った。
11月24日、西武は小野賢二球団社長らが横浜高を訪問。黒土創校長、渡辺元智監督と共に面談した松坂は「誠意は感じた」とし「時間はあるのでじっくり考えたいが、今は社会人しか考えていない」と話した。
この3日後、オリックス1位指名の沖縄水産高の新垣渚に入団を拒否された三輪田勝利編成部長が自死するショッキングなニュースが流れた。この報に接した渡辺監督は「今のドラフトという制度がある以上、新垣君が進学かプロか選択をするのは自由だ。ただ本人がこの事件で追い込まれないか、心配だ」と語った。
東尾監督との初顔合わせ後「西武入りを前向きに」
そんな中で12月3日、松坂は東京都内のホテルで東尾監督と初めて顔を合わせた。
松坂は「東尾監督からいい話を聞いた。監督が直接会いに来てくれるなんて、あまり聞かない。白紙に戻してゆっくり考えてから結論を出したい」、東尾監督は「一方的に社会人ではないと理解している。ゆっくり考えてほしい、もう一度会いたい」とそれぞれ語った。なおこの日は新垣もオリックスと2回目の面談を行ったが、新垣は「次回の交渉で大学進学の意思を伝えたい」と話している。
12月9日、東尾監督との再度の交渉が行われた。この日は都内のホテルで、東尾監督、松坂、松坂の両親の4人で食事をしながら約1時間半の交渉が行われた。
松坂は交渉の間、明確な意思を伝えなかったが、その後の記者会見で「西武入りの方向で前向きに考えたい」と語った。隣の東尾監督は「今初めて聞いて、ドキッとした」と語り、会場を沸かせた。