Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER

「じつは横浜も楽天も入団テストで落ちました」巨人で新人王、“育成の星”の逆転人生…「年俸240万円→推定3億円超」「巨人もダメなら横浜で打撃投手に」

posted2025/04/22 17:01

 
「じつは横浜も楽天も入団テストで落ちました」巨人で新人王、“育成の星”の逆転人生…「年俸240万円→推定3億円超」「巨人もダメなら横浜で打撃投手に」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

9年連続60試合以上登板の記録を持つ、巨人・山口鉄也。2018年に現役引退。キャリア後半は推定年俸3億円超の年も

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

PROFILE

photograph by

BUNGEISHUNJU

2008年、セ・リーグ新人王に輝いた巨人・山口鉄也。育成選手出身として史上初の快挙だった。高卒でアメリカに渡った男が新人王になるまでの“7年間”とは? 【全2回の第2回/1回目も公開中】(初出:Number975号)

◆◆◆

「じつは横浜も楽天もテストで落ちた」

<横浜商業高校を卒業し、いきなりアメリカに渡った山口。ダイヤモンドバックス傘下ルーキーリーグのチームで4年プレーするが、メジャーの舞台は想像以上に遠かった。>

 秋にシーズンが終われば帰国して、アルバイトをしながら練習を続けた。新横浜の公園で壁当てをしていると、ベビーカーを押すママたちの目が気になることもあった。

ADVERTISEMENT

「『一人で何やってるんだろ』って思われてたでしょうね……。正直、自分でも『こんなんでうまくなるわけないよな』って思ってました」

 アメリカと日本。半年ごとに濃淡のある期間を繰り返し、新たな決断の時がやってくる。渡米4年目の2005年、メジャーには手が届かないことを悟り、シーズンインを前にして帰国することを決めたのだ。

 山口は伝手を頼ってプロ野球の入団テストを受けることにした。ほかに道はない。これでダメなら諦めがつくと思っていた。

 こぎつけたベイスターズの入団テストで、恩人との出会いを果たす。テストの数日後、山口の電話を鳴らしたのはベイスターズの国際・編成部長、亀井進だった。

「悪いな。いいと思って推したんだけど、ダメだった。おれがつなぐから、次は楽天のテストを受けてみたらどうだ」

 イーグルスでも不合格を言い渡されると、今度はジャイアンツを紹介してくれた。後年、亀井は「ジャイアンツもダメならベイスターズで打撃投手として雇うつもりだった」と、山口に明かしている。

年俸240万円「アメリカ時代から約2倍に…」

 05年10月26日、山口は実戦形式のテストに臨んだ。その姿を凝視していたのが、二軍投手コーチだった小谷正勝である。

「仕入れ(スカウティング)に口は出さない」を信条とする小谷が会場にいたのは、年上のスカウト部長、末次利光の誘いを断れなかったからだ。小谷は言う。

【次ページ】 年俸240万円「アメリカ時代から約2倍に…」

1 2 3 NEXT
#山口鉄也
#読売ジャイアンツ
#横浜商業高校
#横浜ベイスターズ
#亀井進
#小谷正勝

プロ野球の前後の記事