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「食事は食パンとリンゴ1個で…」巨人で新人王、“育成の星”が高卒後アメリカで痛感した「米マイナーリーグの過酷な現実」「給料は月10万円」
posted2025/04/22 17:00

9年連続60試合以上登板という金字塔を打ち立てた、巨人・山口鉄也。2018年に現役引退
text by

日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
BUNGEISHUNJU
2008年セ・リーグ新人王に輝いた巨人・山口鉄也。育成ドラフト出身として史上初の快挙だった。高卒でアメリカに渡った男が新人王になるまでの“数奇な7年間”とは? 【全2回の第1回/2回目も公開中】(初出:Number975号)
<9年連続60試合以上登板という金字塔を打ち立てた鉄腕のプロ入りへの道筋は儚く遠いものだった。高校卒業後、米国を経て入団テストの末に巨人入り。育成選手初の新人王が誕生するまでの7年間に迫る>
昨シーズン限りで現役を退いた山口鉄也の成績をあらためて見つめ、思わずうなる。
5年続けた時点で新記録の60試合登板を9年も継続した(2008~16年)。最終年を除く8年間の防御率が「0.84~3.05」のレンジに収まっているのも驚異的だ。14年には史上初の通算200ホールドを達成。勤労と安定の左腕は、ジャイアンツのブルペンを文字どおり支えた。
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プロ入りを果たし、現実に一軍のマウンドに立ち始めるまで、鉄腕の未来を予見する者が現れなかったのも無理はない。ここに至る足取りは、古びた吊り橋を渡るかのように頼りなかった。
「巨人に指名されるかも…」を諦めた
01年夏、横浜商業高校の野球部を引退した山口の心に、プロへの希望は微かにあった。野球部の監督から「毎日10km走ればジャイアンツに指名される可能性がある」と聞かされたのだ。10km走の継続は、「彼はそれだけの努力を続けている」として、担当スカウトが山口をドラフト指名選手に推すための材料になるはずだった。
だが、走り始めて数日後、足が止まる。
「おれは騙されてるんじゃないか。とにかく練習だけはさせておこうと監督は思ってるんだろう。本当に指名されるわけがない」