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「サッカー日本代表人気停滞の原因は?」元監督トルシエが記者の質問にズバリ「W杯でドイツとスペインに勝ったが…Jリーグと世界に違いはない」
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田村修一Shuichi Tamura
photograph byJFA/AFLO
posted2025/04/13 17:00

1カ月間にわたって日本に滞在したトルシエ氏。彼の目に移った現在の日本サッカー観とは
「カタールW杯でのドイツ戦やスペイン戦の勝利は、最終的に人気面での押し上げにはならなかった。むしろ相手がチュニジアやインドを破ってベスト8に進んだ方が、大きなインパクトを与えていただろう。そうした転機が人気停滞を打破する契機となる。
日本に必要なのは代表のパフォーマンスであるのに、20年以上にもわたって日本はベスト16の壁を突破できていない。それが大きな停滞感を生み出し、今日まで続いている。今はW杯予選を突破しエネルギーと興奮に溢れているが、その熱気が行き場をなくしている。停滞を打開するには新たな扉を開く以外になく、それはW杯で準々決勝に進むことだ」
もしベスト16以前で再び敗退したとしたら…
――しかし簡単なチャレンジではありません。次のW杯は大会形式が変わりますが、ベスト16に進んでもイングランドやイタリア、ブラジル、アルゼンチンといった大国と当たったら、勝ってベスト8に進むのはとても難しいです。
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「大会の形式がどうであれ――つまり32カ国から48カ国にチーム数が増えても、日本人、日本サッカー、日本メディアの期待は変わらない。ベスト16の壁を破って新たな高みに到達することだ。
日本はW杯予選を何の問題もなく突破した。ここまで無敗、しかも3試合を残して圧倒的な得失点差での突破は、日本代表史上最高のパフォーマンスといえる。日本はアジアNo.1であることを厳然と示し、世界のベスト15に位置することを証明した。日本の人々はそのことに興奮しながら、代表が次の壁を突破する瞬間を今かと待っている。それが国民の期待だ。
期待と興奮に後押しされて壁を突破したとき、日本は転機を迎えて停滞を打破できる。逆にベスト16以前で再び敗退したら、それは新たな敗北にほかならず、日本の人々のモチベーションや情熱に少なからぬ影響を与えるだろう。代表の不振は人々に大いなる失望をもたらす。若年層の育成に与える影響も少なくない。子供たちはサッカーよりもラグビーやバスケットボール、バレーボールを選ぶようになるかもしれない」
Jリーグと世界で起きていることに違いはない
――リスクもまた大きいということですね。
「そうだ。だが同時に日本のJリーグクラブを訪問して感じたのは、日本の内部と世界で起こっていることに違いはないということだった」〈つづく〉
