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“105キロの相手”にも巴投げ…角田夏実(32歳)が世界選手権“辞退”のウラに「2つの理由」 じつは“体重無差別”での闘いにこだわってきた過去
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2025/04/10 17:01

世界選手権の“辞退”が発表されたパリ五輪金メダリストの角田夏実(32歳)
角田が重要視してきた「無差別」での闘い
それは4月20日に行われる全日本女子選手権への出場だ。これは階級別の全日本選抜体重別と異なり、無差別で実施される。
角田はパリ五輪後、全日本女子選手権への挑戦を何度も語ってきた。男子の同様の大会、全日本選手権でも軽量級の選手が挑戦するたびに話題となるように、体重の関係のない場で戦うことへの憧れを強く持つ選手は少なくない。
角田もまた、以前から無差別での大会である全日本女子選手権に意欲を示してきた。
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実際、2020、2021年と2度出場しているほか、「怪我するとよくないからと止められました」と五輪代表争いへの影響を心配する周囲の声でとりやめたが、2020、2021年以外でも出る意向を持っていた年があった。
過去には“105キロの相手”にも巴投げを…
もともと志向していた大会であった上に、パリ五輪後の大きなモチベーションでもあった。パリまでは金メダルだけを見据えて取り組んできた。だが目標をかなえたあと、同じように取り組むことができないのは自然なことだ。年齢的にも32歳、人生を見渡して、競技をすんなり続行する、「ロサンゼルス五輪を目指す」と言うことは難しい。
その中でも、全日本女子選手権には出たいという意欲を持ち続けていた。怪我も抱えている中で、無理に減量するなど全日本選抜体重別に間に合わせて、そこから2週間の無差別の全日本女子選手権に出て、(選ばれていたら)6月の世界選手権へ――というのは客観的にみても現実的ではない。そう考えれば、一連の選択もまた、自然なことであったと言える。
その全日本女子選手権では、2020年の大会では初戦となった2回戦で敗退。
続く2021年には、やはり初戦となった2回戦で78kg超級、105kgの田中里沙と対戦。体格差をものともせず得意とする巴投げをかけに行くなどして果敢に攻め、延長の末、相手に指導3つの、反則勝ちを収めている。続く3回戦では敗れたものの、角田の1勝は、大会のハイライトの一つとなった。