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“怪物候補の新2年生”最速152キロも「そっか、みたいな感じです」織田翔希だけでなく…155キロ腕攻略の横浜「心の余裕が」「球速は気にしない」
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間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/29 17:01

横浜高校2年生の織田翔希。“松坂大輔2世”との一部報道もあるが、地に足のついた考えでマウンドに立っている
「真っ直ぐを狙って、初球で仕留められればと思っていました。変化球だったら1球待って、真っ直ぐだったら振ろうと決めていました。個人のプライドではなく、チームの勝利に貢献する打撃を心掛けました。石垣投手の球にも対応できる練習をしてきた自信もあったので心の余裕がありました」
横浜打線は150キロを超える速球にもひるまない。その根底には「投手の良し悪しは球速ではない」という考え方がある。エースナンバーを背負う奥村頼人投手は言う。
「自分がこだわっているのは球の質です。130キロ台後半で空振りを取れる真っ直ぐを理想としています。球速は気にしていません」
自己最速タイ146キロも「球速には関心がない」
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健大高崎戦は2番手で登板し、自己最速タイの146キロを計測したが「スピードには関心がありません」と答えている。150キロ以上を連発する石垣には他の投手にはないすごさを感じているものの、対抗心はない。
奥村が追求するのは、柔らかいフォームから7、8割の力で投げる伸びのある速球。打者に球速表示以上のスピードを感じさせる球だ。お手本にするのは同じ左腕の楽天・早川隆久投手と、昨秋の関東大会で対戦して今春のセンバツでもベスト4入りした浦和実業・石戸颯汰投手。打者としても中軸に座る奥村は、こう話す。
「石戸君のフォームはすごくチェックして参考にしている部分があります。打者として対戦した中で一番、球の速さを感じました。大げさかもしれないですけど、自分は石垣君よりも石戸君の球に打席で速さを感じました」
120キロ台の速球でも打者が振り遅れる浦和実業・石戸の投球に、奥村は「投手はスピードではない」根拠を見出している。そして、かつては追い求めていた球速へのこだわりを捨てた。
2年生で最速152キロも「そっか、みたいな」
奥村と2枚看板を担う織田翔希投手も、球速への関心が高くない。
1回戦の市立和歌山戦では2年生投手としてセンバツ最速タイとなる152キロをマークしたが、「ベンチに帰って『出た』と言われました。投げている時は球速を意識していません。『そっか』みたいな感じでした」と興味を示さなかった。
先発を任された健大高崎戦でも球速ではなく、質に重点を置いた。上半身が力まないように心掛け、強力打線の内角に速球を投げ込む。この試合、織田が投じた103球のうち速球は86球。実に、83%を占めている。最速は149キロで、大半の速球は140キロ前後。球速では石垣に及ばなくても、7回を無失点に抑えた。
これだけ球種の比率に偏りがあれば、健大高崎の選手たちも当然、速球に狙いを定める。ところが、球速表示以上の伸びと制球力に対応できなかった。